不祥事どう防ぐ 「他人ごと」にさせない対面研修
2025.08.02 04:10
金融機関において、不祥事防止や実際に不祥事が発生した場合に実施されるのが全行職員を対象とした「研修」である。
コロナ禍以前は、多くの金融機関で外部講師やコンプライアンス担当部の行職員が対象者を集めて、研修を実施したり、各支店長が講師となり支店ごとに研修会を開催し、その報告をコンプライアンス担当部門に報告するといった形式が多かった。
コロナ禍以降、現在はどう変化したか。
筆者の見るところ、圧倒的にリモート形式、それもコンプライアンス担当者が研修内容を説明している動画を事前に収録し、その収録動画を部下が視聴したことを支店長が確認し、担当部署に報告する形式が一般化しているようである。果たして、それで不祥事の防止や抑止につながるのか。この点、筆者は大いなる疑問を持っている。
対面研修、オンライン研修、それぞれメリットとデメリットがある。行職員に何らかの動機付け(例えば、その動画などを視聴しなければ、今後の業務に支障をきたすとか、昇進・昇格に影響する)ができているものであればオンライン研修でも十分であろう。
しかし、不祥事の防止・抑止の研修について、マクロ的には動機付けがあるがミクロ的に見た場合、動機付けができているだろうか。
多くの金融機関で不祥事が発生した場合、それを自分のことと捉えるのは発生時の部店在籍者と本部の担当部だけである。その他の部店の行職員は、まるでテレビの情報番組やワイドショーを見ている感覚で「面白いけど自分には関係ない」といった意識が強いように思われる。
そんな状況のなかで、いくら担当役員やコンプライアンス担当部門が力説しても、しょせん「他人ごと」としか感じないのではないか。
「他人ごと」と感じさせないようにするにはどうすべきか。その答えは対面研修で実施することである。
不祥事の予防・抑止に係る研修は行うことが目的ではなく、その研修を通じて不祥事がどういった影響を自金融機関、自身に及ぼすかといったことを自分ごととして考えてもらい、二度と不祥事を起こさないことである。別の言い方をすれば、不祥事の防止・抑止の研修は、いかに動機付けを行えるかでその効果は決まるといっても過言でない。
過去、某地方銀行が自らの不祥事を再現ドラマとして、それを行員に見せて研修効果を上げたといった話がある。
本気で不祥事の防止・抑止を考えるのであれば、こうした点を考慮して研修を実施してほしい。
金融監査コンプライアンス研究所代表取締役 宇佐美 豊
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