不祥事どう防ぐ 人事異動の効果

2025.07.05 04:10
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不祥事防止の対策としてよく知られているものに「人事異動」がある。


そもそもは、金融庁の監督指針(2019年12月に削除済み)に「人事管理に当たっては、事故防止等の観点から職員を長期間にわたり同一業務に従事させることなくローテーションを確保するよう配慮されているか。」といった着眼点があったことから、支店においては、おおむね3年、本部においては、おおむね5年以内に人事異動することが慣例化している。監督指針から削除されていても、多くの金融機関では、こうした慣行が引き続き存在している。


監督指針から削除されてはいるが、過去の不祥事の事例を分析してみると、こうした人事異動をきっかけに不祥事が発覚したケースも多くある。例えば「定期の人事異動で支店から本部に異動となったことにより、顧客からの借金が発覚。その後の内部調査で本件(不祥事)が発覚した」(A金融機関)や、「人事異動発令後の後任者との引き継ぎ時に、顧客との不自然な会話を後任者が聞き、その内容を上司に伝えたことから本不祥事が発覚いたしました」(B金融機関)といった事例も公表されている。


こうしたことから、人事異動は不祥事を防ぐうえで一定の効果があると言える。


一方、リスク性商品(投資信託・保険)につき適切な顧客との関係性構築の観点から担当者を先述の期間にとらわれることなく、長期間人事異動の対象としないといった取り扱いを行っている金融機関も現に存在する。


では、どのように考え、整理すればよいか。


人事異動が不祥事の発生を防ぐのに一定の効果があるのも事実であり、また、リスク性商品などについて顧客との関係性を築くこともまた重要である。


従って、多くの行職員については、これまでどおり一定期間で人事異動を行うとともに、リスク性商品などの担当者について長期間人事異動を行わない場合には、内部監査部門による特別監査やモニタリング、顧客への抜き打ちヒアリングなどの特別なけん制機能を創設することも必要であろう。


また、人事異動については形式的に辞令などを発するのではなく、「本部から営業店へ」「営業店から本部へ」など、物理的に移動を行うことが重要である。


本部間で人事異動を行ったとしても、結局類似の業務のため物理的にほとんど移動をしておらず、不祥事が発覚しなかった事例も過去にはある。


不祥事防止には、人事異動が一定の効果をあることを知っておくべきである。


金融監査コンプライアンス研究所代表取締役 宇佐美 豊

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