金融庁長官に伊藤監督局長　後任に石田総括審議官　局長級以上9人が全員交代

金融庁は6月24日、井藤英樹長官が退任し、後任に伊藤豊監督局長を昇格させる人事を発表した。次官級（長官、金融国際審議官）から局長級までの9ポストがすべて入れ替わった。金融国際審議官には三好敏之・国際総括官、監督局長には石田晋也・総括審議官、総合政策局長は堀本善雄・政策立案総括審議官、企画市場局長に井上俊剛・証券取引等監視委員会事務局長、総括審議官には柳瀬護・総合政策局審議官（モニタリング担当）を起用する。証券取引等監視委員会事務局長には齋藤馨・預金保険機構金融再生部長、国際統括官には尾﨑有・総合政策局審議官（監督局担当）、政策立案総括審議官には岡田大・総合政策局参事官（監督局担当）が就く。着任日は7月1日付（三好氏と尾﨑氏は7月22日付）。

井藤長官は1年での退任となった。後任の伊藤氏は、財務省時代から将来の事務次官候補と目されたエリート官僚だ。同省秘書課長時代には、森友学園の問題にも対応。監督局長時代には、大手損害保険会社による保険金不正請求事案や保険料調整行為に加え、三菱UFJ銀行で発生した貸金庫からの金品窃取事案など世間を揺るがす不祥事にも対応。足元では、不正融資を繰り返してきたいわき信用組合に対しても業務改善命令を発出するなど、豪腕を発揮してきた。

金融界の間では、伊藤氏の長官就任は特段の驚きはなく、「順当だ」（地域銀関係者）と受け止める。他方、地域金融機関の経営陣との持続可能なビジネスモデルに関する対話の陣頭指揮をとっていることもあり、「バリバリの再編論者」（地銀関係者）と見る向きもある。新長官が地域金融機関に再編を迫るのか、ひとつの焦点となりそうだ。

監督局長に就任する石田氏は、銀行第一課長と銀行第二課長を歴任。地域金融の実態を熟知している。「企業価値担保権」は創設に向けた議論の段階から携わってきた。足元では「事業性融資推進プロジェクトチーム」のチーム長を務め、実務上の課題の検討や金融機関への普及に尽力する。その人柄は、朗らかで「どっしりと構えている人」（同庁関係筋）だという。

監督局では、銀行・証券・保険の監督課に並ぶ部署として「資産運用課」が7月に新設される。資産運用業との対話を通じて、「あるべき姿」に育成できるのか、その手腕が問われることになる。

総政局長に就く堀本氏は、民間企業に転籍して復帰した「リボルビング」の先駆けとなった人物。総政局審議官としてサイバーセキュリティやモニタリングを担当しており、経験は十分だ。金融界からは警戒されていた屋敷利紀総政局長とのスタンスの違いが、関心を集めそうだ。

企画市場局長に就いた井上氏は、信用制度参事官としての経験があり、制度設計に精通する。企画市場局担当として、参事官・審議官も歴任。盤石の体制を整えた格好だ。

伊藤　豊氏（いとう・ゆたか）　埼玉県出身、61歳。

1988年9月　国家公務員Ⅰ種試験（法律）合格

1989年3月　東京大学（法）卒

1988年4月　大蔵省（現財務省 ） 大臣官房 文書課

1991年6月　大蔵省 大臣官房付（留学）

1993年7月　大蔵省 証券局 証券市場課

1995年7月　国税庁 東京国税局 雪谷税務署長

1996年7月　大蔵省 銀行局 銀行課 課長補佐

1998年7月　大蔵省 主税局 総務課 課長補佐

1998年8月　金融監督庁（現金融庁） 監督部 監督総括課 課長補佐

1999年7月　金融監督庁 検査部 検査総括課 金融証券検査官

 　　　　　　兼 監督部 銀行監督第一課 課長補佐

 　　　　　　兼 監督部 銀行監督第二課 課長補佐

2000年1月　金融監督庁 監督部 銀行監督第一課 課長補佐

 　　　　　　兼 監督部 銀行監督第二課 課長補佐（2000年6月）

2000年7月　金融庁 監督部 銀行第一課 課長補佐

2000年7月　大蔵省 主計局 調査課 課長補佐

2001年1月　財務省 主計局 調査課 課長補佐

2002年7月　財務省 主計局 主計官補佐（経済産業第一係、二係主査）

2003年1月　兼 内閣府本府 産業再生機構（仮称）設立準備室 参事官補佐（～2003年4月）

2003年5月　株式会社産業再生機構 企画調整室 上席審議役

2005年7月　財務省 大臣官房 総合政策課 課長補佐

2005年8月　兼 財務総合政策研究所 研究部 国際交流室 国際交流官

2006年7月　財務省 大臣官房 企画官

2007年8月　交流派遣（株式会社東京証券取引所）

2011年7月　財務省 主税局 税制第三課長

2012年7月　財務省 主税局 調査課長

2012年12月　財務省 主税局 税制第三課長

2013年6月　財務省 主税局 税制第二課長

2015年7月　財務省 大臣官房 秘書課長

2019年7月　金融庁 総合政策局 審議官（監督局担当）

2021年7月　金融庁 総合政策局 総括審議官 兼 総合政策局 公文書監理官

2022年6月　金融庁 監督局長

三好　敏之氏（みよし・としゆき）　東京都出身、56歳。91年東大法卒、大蔵省（現財務省）入省、財務省理財局国債業務課長、同局国債企画課長、国際局国際機構課長、同局開発政策課長、同局総務課長、金融庁総合政策局参事官（国際担当）、同局審議官（監督局担当）、23年7月同局国際総括官。

石田　晋也（いしだ　しんや）　長野県出身、59歳。90年東大経卒、大蔵省（現財務省）入省、金融庁証券取引等監視委員会開示検査課長、監督局銀行第二課長、同局銀行第一課長、総務企画局総務課長、総合政策局秘書課長、同局参事官（監督局担当）、同局審議官（監督局担当）、22年6月同局総括審議官。

堀本　善雄氏（ほりもと・よしお）　兵庫県出身、59歳。90年東大経卒、金融庁総務企画局参事官（金融モニタリング担当）、監督局銀行第二課長、検査局総務課長、監督局総務課長、総合政策局審議官（サイバーセキュリティ・総合政策局担当）、同局審議官（モニタリング担当）、同局審議官（監督局担当）、同局審議官（官房担当）、23年7月同局政策立案総括審議官。

井上　俊剛氏（いのうえ・としたけ）　奈良県出身、56歳。91年東大法卒、大蔵省（現財務省）入省、金融庁監督局証券課長、同局保険課長、総務企画局信用制度参事官、企画市場局企業開示課長、総合政策局参事官（企画市場局担当）、同局審議官（企画市場局担当）、23年5月証券取引等監視委員会事務局長。

柳瀬　護氏（やなせ・まもる）　東京都出身、55歳。92年東大法卒、財務省国際局為替市場課長、大臣官房参事官（大臣官房担当）、金融庁監督局銀行第一課長、総合政策局秘書課長、同局参事官（企画市場局担当）、同局参事官（モニタリング担当）、23年7月同局審議官（モニタリング担当）。

【訂正】伊藤豊氏の出身地、年齢を訂正しました（2025年6月24日13時27分）