【眼光紙背】 「熟議」の国会こそ見たい
2025.06.19 04:30
政治の季節がまた到来した。国会が会期末を迎える6月22日に首都で東京都議会選、7月下旬に参院選がそれぞれ投開票される。国会では内閣不信任決議案の動きも広がった。もし石破茂首相が解散に踏み切れば39年ぶりのダブル選挙。政局の風が吹き出した。
一般紙の政治部デスクは「前回1986年のダブル選は当時の中曽根康弘首相が周到に謀った。今回は行き当たりばったり」とし、ぎりぎりまで何が起きても不思議でないという。本稿が掲載されるころには帰趨が判明するだろう。もっとも筆者は政治評論を主とする立場になく、その論評は控えたい。
ただ、恒例行事のごとき政局にはうんざりの感がある。今国会も企業・団体献金の改革や選択的夫婦別姓といった国民注目の懸案はついぞ進展を見なかった。経済関連でも、年金制度改革関連法案は与党と立憲民主党の合意でなんとか日の目を見たものの、審議十分とは言いがたく、本来なら各党の幅広い調整が求められる案件だ。デジタル社会に対応する個人情報保護法改正案は、経済界との調整も難航し提出が見送られた。
ただでさえ今の日本は、首相が「国難」と評した米トランプ政権の関税問題や物価高騰が直撃し、国民生活は窮乏している。国民の代表が審議よりも政治闘争にのめりこむ姿はいただけない。
前回の衆院選で与党が過半数割れし、数の力によらない「熟議」が国会のうたい文句になったはずではなかったか。高額療養費制度見直しの一時凍結など、野党が与党に働きかけて成果が見られた分野もある。だが、会期末が近づくと永田町の関心は結局政局に移り、審議がぼやけていく。
通常国会の会期は原則150日。これは主要先進国でも短い方だ。米国や英国は事実上の通年国会で、ドイツのように会期すらない国もある。もはや、日本も国会法を改正して通年会期にするのも一案とすら思えてくる。
(編集委員 柿内公輔)
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