日銀、政策金利を据え置き 国債購入は26年春に減額幅縮小 「毎四半期2000億円」へ
2025.06.17 12:31
日本銀行は6月16、17日に開いた金融政策決定会合で、政策金利である無担保コールレート翌日物を「0.5%程度」に誘導する方針の維持を全員一致で決めた。
今会合で「中間評価」した現行の国債購入減額計画については、月間購入額を毎四半期4000億円減らし、終期(2026年1~3月)に3兆円程度とする計画を維持。一方、26年4月以降は減額幅を毎四半期2000億円に縮小。次期計画終期(27年1~3月)の月間購入額は2兆円程度になる見通し。
田村直樹審議委員は「長期金利の形成は市場と市場参加者に委ねるべき」として減額幅を縮小する計画議案に反対票を投じ、合わせて現行ペースを維持する議案を提出。反対多数で否決された。
日銀は国債購入減額計画を実施した24年8月以降の国債市場動向や機能度について、マーケット関係者の意見や要望を聞き取る債券市場参加者会合を25年5月20、21日に開催。現行計画の中間評価や、26年4月以降の計画策定の参考にする考えを示していた。
次の利上げ「総合判断」
植田和男総裁は会見で、国債購入減額計画の中間評価に関し、国債市場の安定に配慮するため「予見可能性」と「柔軟性の確保」を意識したことを説明。これまでと同様、先々(27年3月まで)の月間買い入れ予定額を明示して予見可能性を高めつつ、26年6月の金融政策決定会合で新たな減額計画の「中間評価」を実施することで柔軟性を担保する狙いを語った。
毎四半期の減額幅を2000億円に縮小したことについては、これまでの4000億円ペースでは「市場の安定に不測の影響を及ぼす可能性がある」とみて、「将来の(長期)金利、あるいは国債市場の不安定さを未然に防ぐための措置」として見直した背景を述べた。
国内の経済・物価情勢に対しては、展望レポート(経済・物価情勢の展望)を改定した5月会合時点と「大きな構図に変化はない」との現状認識を示した。今後の金融政策運営では「現在の実質金利が極めて低い水準」にあることを踏まえ、同レポートの見通しに即して経済が進展する場面を念頭に「引き続き、政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」と、段階的な利上げスタンスは維持した。
一方、米トランプ関税下の〝見通しにくさ〟も繰り返し強調。企業・消費者マインドなど定性的な要素が濃いセンチメント関係の指標は「悪いものが割と増えてきている」との見方を示す半面、経済統計など定量的なハードデータは「まだしっかりとしている」と影響反映のラグを訴えた。
進行中の日米関税協議については、「(妥結が)後ずれすればするほど『通商政策を巡る状況が不確実である』という(経済・物価情勢)判断は続いていく」と協議の行方に対する視線を強めた。
緊迫感の増す中東情勢による原油価格上昇の国内波及では、日銀が政策判断で重視する「基調的な物価上昇率」や「インフレ期待」を押し上げるリスクに触れ、「注意深くみていきたい」とした。
次の利上げ時期に関しては、「不確実性が極めて高い」現状を受け、経済・物価関連の統計(データ)に加え、本支店を通じて集まる企業ヒアリングの内容など「できるだけ幅広い『情報』に基づいて分析を行うことが従来以上に重要」との考えを述べ、定量・定性両面で「総合判断」していくスタンスを訴えた。
将来的なグローバル金融リスクにも言及。モニタリングにおける情報開示が銀行など伝統的な金融機関に比べて不十分な海外ノンバンクセクターを念頭に「何が起こっているか見えない部分が多い」と指摘。半面、同セクターと邦銀との投融資関係は強まり、「注意深くモニターしていきたい」との構えを表した。
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