【推薦図書】「サステナビリティ基準がわかる」(阪智香・水口剛著)
2025.06.13 04:30
【推薦者】東和銀行取締役常務執行役員・鈴木 信一郎 氏
制度開示最前線からの示唆
2024年の世界の平均気温が観測史上最も高かったとの報道や国内外での山火事など、気候変動の進行を実感する機会は増える一方である。
こうしたなか、本書では25年3月に公表されたサステナビリティ開示基準について、アカウンタビリティーの出発点としての情報開示の目的を起点に、本基準制定までの歴史的経緯や具体的な内容・考え方が丁寧に解説されている。本基準のタイムリーな適用を通じて、自社商流の上流下流を含む温室効果ガス(GHG)排出量コントロールなどバリューチェーン経営へのシフトや財務とサステナビリティの統合思考が進めば、持続可能でレジリエントな経済への移行に向けた確かな道筋となろう。
さて、地域金融機関は国内固有の大きなリスクである人口減少問題とも総じて向き合っており、そうしたテーマに少しでも貢献したいとの思いを共有する同志が「面」で連携して地域の持続可能性を高めるアプローチが考えられる。サステナブルファイナンスはそのための有効なツールであるとともに、リスク調整後リターンの向上やサステナビリティインパクトの追求という目的観もカバーしている。私たちの今後に向けて豊潤な示唆を得られる一冊である。
(日経文庫、税込み1320円)