不祥事どう防ぐ 多重債務へ陥る前に周知
2025.06.07 04:30
〝不祥事を防ぐ〟という意味では、いかに行職員が「多重債務に陥らないようにするには、どうしたらいいのか」。ある意味この点に尽きるのであろう。
しかし、多重債務に陥る要因のほとんどがプライベートに係る事柄に端を発しているため、金融機関としてはけん制やチェックが掛けにくく、結局行職員の個人的な倫理観頼みとなり、金融機関として適切な対応策を打てていないのが現状であろう。
では、どうすればよいのか。
多重債務に陥らないことがまずは大事だが、結果的に多重債務に陥ってしまう行職員が一定数いるのもまた事実である。
大変古いデータで恐縮だが、過去、多重債務者の相談に対応してきた「NPO法人女性自立の会」のアンケート結果(2008年)によれば、多重債務者が債務に苦しんでいるときに求めていることは「正しい情報を教えてくれる窓口」「小さな不安に対応してくれる窓口」など、多重債務者の視点に立った場所と人なのである。
また、相談するまでに時間がかかった理由として「どこに相談していいか分からなかった」「(怒られるのではないか、だまされるのではないかといった間違った思い込みから、行動を起こすことが)不安だった」この二つで70%を占めている。
現状でもこの傾向に大きな違いはないのではないか。
従って、「自分が仮に多重債務に陥ったらどうしたらよいか」といったことを、事前にコンプライアンス研修・教育などで周知しておき、能動的に行動することを促すことが必要ではないか。
併せて、多重債務という、とてもセンシティブな事柄であることから、各金融機関が設置している行職員の相談窓口・態勢の拡充、具体的には金融機関内ではなく外部(弁護士・司法書士など)にこうした多重債務などに係る相談を受け付けてくれる窓口を設置して、その内容を周知徹底し、個人の債務整理や法的手続きなどについて周知することが必要であろう。
過去、筆者は「うちの金融機関には多重債務者はいない」「債務整理の手法などを自金融機関の行職員に教えるなどプライドが許さない」といった意見を金融機関の経営者・経営陣から数多く聞いてきた。
しかし、毎月のように預金取扱金融機関で、不祥事が発生している状況などを踏まえたとき、果たして本当にそれでよいのか疑問を呈さざるを得ない。
外的環境の変化とともに、管理態勢をその変化に対応させなければ不祥事は防げない。
金融監査コンプライアンス研究所代表取締役 宇佐美 豊
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