列島の止まり木 コンサルばかりしないで
2025.05.23 06:00
長く続いた低金利時代、金融機関は「顧客本位の業務運営」に取り組んできた。取引先に寄り添って課題を共有し、解決の糸口を見つける。こうしたコンサルティング営業の対価として得られる「役務取引等利益」は増加傾向で、低金利時代の経営を支えてきた。
ところが、ある中国地区信用金庫では2025年度に入ってから「コンサルばかりやらないでね」と営業店にくぎを刺すようになった。理由は、思うように集まらない預金。この信金では、コンサル営業の庫内資格を設けるなど力を入れてきたが、最近の預金金利上昇による競争激化で預金の獲得に苦戦。預金減少が経営に与える影響を看過できないため、コンサル営業を少し自重するよう異例の通達を出す事態に至った。別の信金役員も「(営業店が)コンサル業務を理由に、預金の提案をしていない」と話す。
一方、経営陣の心配をよそに営業現場がコンサル業務に注力する姿は「顧客本位の業務運営」が金融界に浸透した証との見方もある。預金獲得に注目が集まるなか、顧客本位の姿勢を本当に定着できるのか問われている。