【推薦図書】『「答えを急がない」ほうがうまくいく』(三浦麻子著)
2025.05.23 04:30
【推薦者】信金中央金庫常務理事・高橋 裕司氏
あいまいさへの耐性
人は日常的に、ごく些細(ささい)なものから複雑なものまで、大小さまざまな決断を行いながら生活しているが、ときに明確な答えを見いだすことができない「あいまい」な状態に陥る。
この不安定な状況、あいまいさへの耐性が低いと、早く抜け出したい気持ちに心が支配され、無意識に、直感的な決断を行ってしまい、のちに後悔することも少なくない。
これは社会心理学で、二重過程理論と称される考え方とのことである。
また、あいまいさへの耐性は人によって差はあるが、日常とは大きく異なる状況、たとえばコロナ禍や大震災時に、普段は決して見られない行動をする人が続々と現れたように、人の思考や行動は、置かれた状況によって大きく影響され、他者からのさまざまなバイアス等も受けながら変化していく。
本書は、具体的な事例を数多く交えながら、社会心理学の考え方を、わかりやすい表現で解説している。
米新政権が発足して以降、それこそ日替わりで、これまでの日常と大きく異なる状況に直面しているが、あいまいな世界でより良い判断をするために、その影響や傾向を理解し、耐性を高め、冷静に考えることが大切であることを気づかせてくれる。
(日経BP、税込み2090円)