【推薦図書】『はずれ者が進化をつくる』(稲垣栄洋著)
2025.05.02 04:30
【推薦者】バークレイズ日本カントリーCEO・森原 恒輔氏
多様性を生み出す源
昨今、さまざまな場面で論じられる「多様性」であるが、外資系金融機関に長く勤務する私は、自身の経験から「多様性が組織を強くする」ということに違和感を持つことはなかった。
本書はいわゆるビジネス書の類いではなく若い人向けであるが、著者で植物学者の稲垣栄洋氏の「決まった正解のない世界においては遺伝的多様性が重要である」という主張は、社会や企業組織においても同様であると感じる。
進化の常識では、環境に適応した個体が生き残り、進化が進むとされてきた。だが著者によると、むしろ「はずれ者」が進化を促進する重要な役割を果たすという。「はずれ者」は変化に対応する能力や新しい視点を提供し、集団の遺伝的多様性を生み出す源となる。社会や組織にはそれが革新や発展につながる。
また、植物には、競争への強さ、環境に耐える強さ、変化を乗り越える強さという、生存のための異なった強さがある。私たちホモサピエンスは体が小さく弱い存在だったが、「助け合う」能力により生き残ってきたとされる。不確実性の高い時代であるが、本書にある「ナンバー1になれるオンリー1のポジション」を意識することで、個々が固有の能力を発揮し、組織のみならず世界を発展させることができると期待したい。
(ちくまプリマー新書、税込み924円)