【推薦図書】『東大寺のなりたち』(森本公誠著)
2025.04.11 04:30
【推薦者】金融庁総合政策局参事官・八幡 道典氏
社会人が学ぶ奈良時代は面白い
東大寺の大仏様の「お身拭い」に参加する機会を頂いた。大仏の全身や台座をパタパタとはたいて清掃する夏の恒例行事だ。手のひらの上に何人もの大人が乗る。その巨大さに改めて驚くが、ただ大きいなという陳腐な感想しか湧かないのも情けなく、その成り立ちを学んでみようと本書を手にとった。
奈良時代は、受験科目の「歴史」として学んだが、漢字や年代を覚えるのが難しく、私もそこそこ歴史好きなのだが、必ずしも興味の湧く時代ではなかった。しかし、本書は当時を伝える正史の続日本紀や、東大寺要録といった古文書を丹念に読み解いて史実を踏まえつつ、当時の行事などを再現ドラマのように描いており読みやすい。
受験生的には、ただ漢字だけを覚えていた「墾田永年私財法」は、今風にいえば民間活力の発揮のための規制緩和だったんだな、「恵美押勝(えみのおしかつ)の乱」は今もしばしば起こる政治の権力闘争なんだな、など、現在の知見も加味して読むと面白い。
感染症や天変地異に翻弄(ほんろう)されるのは今も昔も変わらない。科学技術が発達し、政治体制も民主的になったが、抱える課題は今も同じだ。受験の「歴史」では深掘りしなかった時代について、社会人として振り返ってみるのも一興だ。
(岩波新書、税込み924円)
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