企業景況感に〝トランプリスク〟 中長期の物価見通し「過去最大値」 日銀短観
2025.04.01 12:00
企業の景況感で明暗が分かれている。日本銀行が4月1日に公表した3月短観(全国企業短期経済観測調査)では、大企業・製造業の業況判断DIが「プラス12」と前回(2024年12月)調査から2ポイント低下。トランプ米新政権の関税政策による不透明感の強まりなどを受け、4四半期ぶりに悪化した。一方、同・非製造業は、堅調な国内需要を背景に「プラス35」と2ポイント上昇。1991年8月調査(プラス41)以来の高水準を示した。
製造業は、トランプ政権下の通商(関税)政策が景況感を下押し。原材料・エネルギー高によるコスト上昇や海外需要の伸び悩みも続き、「繊維」「石油・石炭製品」「鉄鋼」産業の落ち込みが目立った。
一方、非製造業は、底堅い国内需要が業況改善に寄与。「建設」「不動産」「宿泊・飲食サービス」といった業種では人件費などの価格転嫁も進展。前回から8ポイント改善の「プラス21」を示した「小売」では、好調さを保つインバウンド需要が同DIを高める。
製造・非製造業を合わせた大企業全体のDIでは、「プラス23」と前回から横ばいだった。
再利上げ判断の注目点である企業経営者のインフレ見通しは、短期から長期まで「おしなべて上がっている」(日銀調査統計局)。特に、「3年後」「5年後」の販売価格や物価見通し(平均値)は「過去最大値を更新した」(同)と、予想インフレ率の高まりを示す結果となった。
企業金融については、日銀による25年1月の再利上げ後も緩和的な環境が続く。借入金利水準判断DIは、全規模・全産業ベースで前回から12ポイント上昇の「プラス62」と水準を一段切り上げたものの、「資金繰り」や「金融機関の貸出態度」に関するDIは横ばいで推移した。