【推薦図書】『デフレーミング戦略』(高木聡一郎著)
2025.03.28 04:30
【推薦者】みずほフィナンシャルグループ取締役・平間 久顕氏
デジタル経済の原則
デジタルトランスフォーメーションとは。著名な企業のチーフ・デジタル・オフィサーの言によると「デジタル技術や思想によって、あらゆる関係性に変革を起こし、価値を生み出すこと」であるという。デジタル技術は、人々の生活や行動様式を変え、ビジネスや組織、働き方にも大きな影響を与える。著者は、こうした影響の本質を理解する鍵として「デフレーミング」という概念を提唱している。
デフレーミングの構成要素は、「分解と組み換え」「個別最適化」「個人化」の三つ。従来のビジネスモデルがデジタル技術で分解され、新しいビジネスとして再構築されていく。確かに、モバイルペイメントやシェアリングエコノミーなどのITサービスを展開するスタートアップ企業の成長戦略は、このデフレーミングの原則に従っている。
いわゆるフィンテックも、伝統的な金融業が提供してきたさまざまなサービスから、特にニーズの高い要素や課題の大きな要素を抜き出して、より便利で安価なサービスに仕立て直す技術である。顧客の利便性を高め、ミスを減らし、会社をより効率的にするためにデジタル技術を徹底的に活用する。今後の金融サービスのあり方を考えるうえでも示唆に富む一冊である。
(翔泳社、税込み2200円)