御室健一郎 全国信用金庫協会会長 「ポストコロナへ支援力強化」
2022.01.01 04:55
2022年の信用金庫の課題として五つ挙げたい。
第一の課題は、「ポストコロナに向けた中小企業への支援力の強化」。緩やかに経済活動が回復しつつあるが、対面型サービス業を中心に、取引先中小企業の足元が固まるまではまだしばらく時間がかかると思われる。資金繰りといった喫緊の課題はもとより、ポストコロナの局面も見据え、取引先中小企業を新たな成長軌道にシフトチェンジしていくため、新分野展開、事業再編といった事業再構築支援、また、売上回復のための販路拡大・経営改善支援といった取り組みを強化していかなければならない。
第二は、「経営管理態勢の充実・強化」。信頼され、安全・安心なサービスを安定的に提供していくには、経営トップ主導のもと、経営管理態勢をより一層充実・強化し、各種リスクへの対応力を高めていく必要があるマネーロンダリング・テロ資金供与対策の強化もその一つ。金融庁の策定したガイドライン等に基づく態勢整備を24年3月末までに完了させることが喫緊の課題だ。
第三は、「金融業務のデジタル化への対応」。デジタル化の取り組みは不可逆的な流れとなりつつある。信金でも、デジタル技術を活用した利便性の高いサービスを提供するとともに、紙情報の電子化や定型業務の自動化など内部事務の効率化も進めていかなければならない。デジタル化の進展は、膨大なデータを生み出す。信金が有する多種多様なデータを集約し、最新の技術を用いて分析・活用することで、お客さまの課題解決や業務効率化へ役立てられれば、新たな展開が見込まれる。
第四は、「預金保険料率引き下げの実現」。預金保険機構は、22年度以降の預金保険料率のあり方について議論すべく、昨年7月に「預金保険料率に関する検討会」を設置した。金融システムの安定には「金融機関による健全経営の努力」と「預金保険制度の適切な整備・充実」の両立が基本にあり、そのバランスが重要。ポストコロナに向けた取引先中小企業への資金繰り支援や経営改善支援等の取り組みに経営資源を注力していくためにも、預金保険料率の一段の引き下げが必要であり、その実現に努める。
五つ目は、「業界総合力の発揮」。現在の経済情勢を踏まえると、地域とともに信金が生き抜くためには、収益力を高め、経営基盤を強化していく必要がある。金融業務のデジタル化を含め、ICT技術を活用した業務の効率化の実現が非常に重要なポイントとなる。それには相応の投資やノウハウが必要で、個別信金の取り組みに加え、全信協、信金中金、SSC、共同センター、各地区の情報サービス会社や各地区協会が引き続き緊密に連携し、総合力の発揮による業界の課題解決を目指していく。