【推薦図書】『ドーパミン中毒』(アンナ・レンブケ著・恩蔵絢子訳)
2025.03.14 04:30
【推薦者】住友生命保険代表執行役専務・栄森 剛志氏
快楽と苦痛のシーソー
現代社会には依存症があふれている。ギャンブル依存症に陥ったメジャーリーガーの通訳、スマートフォンを手放せないSNS依存症の若者、タバコや酒をやめられない中高年など、自分をコントロールできない人が多い。
これらの原因はドーパミンにある。ドーパミンは進化の過程で獲得した原始的で強力な仕組みだ。これによりわれわれの祖先は生存競争を勝ち抜き、子孫を残すことができた。しかし、その強力な仕組みが現代社会においてミスマッチを起こしている。
著者はドーパミンの仕組みを「快楽と苦痛のシーソー」と表現する。「いいことがあれば必ず悪いことがやってくる」という経験則のとおり、シーソーが快楽側へ傾くと自己調整メカニズムで苦痛側に引き戻される。そして苦痛から逃れるためにさらなる刺激を求め、依存症へと進行する。
本書で紹介される他者の赤裸々な経験は、時に読む者の心を抉(えぐ)るが、それ故に依存症の現実と対策が強く心に刻まれる。ウェルビーイング(心身の健康と幸福)の実現には「快楽と苦痛のシーソー」の理解が欠かせない。
(新潮新書、税込み1210円)
関連キーワード
おすすめ
アクセスランキング(過去1週間)
- 中堅の外資生保、乗合代理店からの要求に苦慮 変額保険手数料で
- 八十二銀、AIモデル開発50種に 投信販売モニタリングも
- 広島銀、金利再来でALM改革 各部門の収益責任 明確に
- 多摩信金、住宅ローン168億円増 業者紹介案件が4割強
- 金融庁・警察庁、URL貼付禁止案を軟化 銀行界から反発受け 不正アクセス防止で
- カムチャツカ半島付近でM8.7の地震 一部金融機関の店舗で臨時休業
- 金融庁、障害対応の強化要求 クラウド利用拡大で
- 地域金融機関、半数の250機関が預金減 金利戻りパイ奪い合い
- あおぞら銀の中野さん、金融IT検定で最高点 専門部門との対話円滑に
- 信金界、「ことら送金」240信金に拡大 周知姿勢で温度差も