【推薦図書】『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』(戸部良一ほか著)
2025.02.28 04:30
【推薦者】フリー特別顧問・小村 充広氏
現代組織への反面教師
名著である。経済界、政界、各界の著名人が高く評価し、小池百合子・東京都知事の座右の書でもあるらしい。既読の方も多いと思う。
序章の「大東亜戦争における諸作戦の失敗を、組織としての日本軍の失敗ととらえ直し、これを現代の組織にとっての教訓、あるいは反面教師として活用することが、本書の最も大きな狙いである」の通り、本書で明らかにされる日本軍の失敗の本質と教訓は、1984年の初版から40年たった今なお、日本社会・企業の課題として変わっていない。いや日本のみならず、古今東西の国家の衰亡、企業の発展と没落に通じると思う。本質たるゆえんである。
組織に属し、組織の失敗と成功に向き合わねばならない現代社会の人間として、失敗の本質を掘り下げることは知的宿命かもしれない。
本書は学術的研究書でもあり読むのにやや難渋するが、ゆる~くでも一読すればきっと新たな視野や何かを見いだすことだろう。
私は初読の際は、一章の事例研究は斜め読みでよしとした。「逆説的ではあるが、その原因の一つは、過去の成功への『過剰適応』があげられる。過剰適応は、適応能力を締め出すのである」――私には今でも響く。
(中公文庫、税込み990円)