【眼光紙背】先駆けの「物言う株主」
2025.02.20 04:30
フジテレビを巡る一連の問題で、フジの親会社の大株主が一躍脚光を浴びた。米投資ファンドのダルトン・インベストメンツ。いわゆるアクティビスト(物言う株主)で、フジ側に企業統治の欠陥などを指摘した。
過去にも、アクティビストが世間の注目を集めた例には事欠かない。金融界では、あおぞら銀行の筆頭株主だった米ファンドのサーベラスが思い浮かぶ。
アクティビストの存在感を良くも悪くも示した代表格は、2000年代半ばに世を騒がせた「村上ファンド」ではなかろうか。象徴がファンドを率いた村上世彰氏だ。通商産業省(現経済産業省)出身の元エリート官僚らしい鋭い舌鋒で会見は独壇場だった。
05年の阪神電気鉄道株買い占めの際、筆者は一般紙の国土交通省担当で、村上氏にインタビューした。自説を機関銃のようにまくしたてられ、文字通り閉口した記憶がある。
村上ファンドは、標的の企業の株式を握るや、事業再編や改革を迫り、経営陣を震え上がらせた。株主総会でプロキシファイト(委任状争奪戦)も辞さない。いわば「対決型」のアクティビストだが、やがて眉をひそめる世間の支持を失った。
ただ、村上氏の「日本は株主が軽視されている」という言葉は当時も頭に残った。時が流れ、ようやく株主還元の意識が経済界でも高まる。東京証券取引所も重い腰を上げ、プライム・スタンダード市場の企業に23年3月、資本コストや株価を意識した企業価値向上を要請。投資家との対話に積極的な企業に光を当てる試みだ。
アクティビストの姿勢にも変化はみられる。好戦的なファンドも依然あるが、資本効率の向上に関する株主提案を軸にした「提案型」が増えたことだ。
ニッポン放送株を巡るインサイダー事件で逮捕された村上氏は、やがて日本を離れシンガポールに渡った。彼の目に今の市場とアクティビストはどう映るのか、尋ねたい思いにもかられる。
(編集委員 柿内公輔)
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