【推薦図書】『スイスの凄い競争力』(R・ジェイムズ・ブライディング著、北川知子訳)
2025.02.21 04:30
【推薦者】東短リサーチ社長・加藤 出 氏
スイスと日本の差は何か
スイスの平均年収は世界一高い。2023年の数値(経済協力開発機構集計)を最近の為替レートで換算すると1600万円超だ。日本は491万円なので3.3倍である。最低賃金(時給)もスイスは驚くほど高い。ジュネーブなどの主要州は4千円超であり、日本の平均1055円の4倍近い。
しかも実質賃金の伸び率は、この30年間で日本は0%だがスイスは26%だ。スイスでは生産性が伸びて、インフレ以上に賃金が増えながら国民が豊かになっている。スイスと日本の差はどこから来るのか疑問に思い、本書を手にしてみた。
評者が感じたスイスの競争力の源泉は、第一に、小国ゆえに国民や企業は政府に頼れず、個人や企業の努力が重要という意識が強い。第二に、それもあって高度人材教育に熱心で、その結果、IT系で世界トップ10に入るチューリッヒ工科大学、スイス連邦工科大学ローザンヌ校などが輩出する人材を求めてグーグルなど多数の外国の超優良企業がスイスに拠点を作りたがる。第三に、ネスレやスウォッチのように外国籍や外国にルーツを持つ創業者が活躍できる“土壌”があり、それを見て外国から有能な起業家がさらにやって来るという好循環が起きている。今の日本にとって学ぶべき点は多々あるといえる。
(日経BP、税込み3520円)