【推薦図書】『ウィリアム・アダムス-家康に愛された男・三浦按針』(フレデリック・クレインス著)
2025.02.14 04:30
【推薦者】全国労働金庫協会専務理事・西村 良隆氏
本当の日本の歴史を知っていますか
米国で複数の受賞に輝く「SHOGUN 将軍」。“自ら申し出る切腹がふさわしい”。原作で主人公(虎永)が命じた切腹を、家臣自らが申し出る形にあらためさせたという挿話とともに、その時代考証者が、ベルギー人のクレインス氏(現国際日本文化センター教授)であることを知りました。本書は、クレインス氏の手により17世紀初頭の日本に生きたW・アダムスの足跡を描きます。
激動する欧州情勢のなか、アジアを出航し日本にたどり着いた英国人、アダムス。世界情勢やその秩序を理解する環境にない当時の日本。イエズス会士による誹謗(ひぼう)中傷。「天下殿」として実質的に政権を担う家康との出会い。
家康自らが尋問してその資質を見極め、側近(旗本)として重用。その信頼と彼自身の度量に基づく活躍、経済活性化、自由貿易を志向した家康施政に大きな影響を与えます。しかし、秀忠への政権移譲後は活躍の場が減少、日本は「鎖国」の道へ……。
例えば、時の為政者などの人間性や資質、慧眼(けいがん)の有無など、歴史の隠された本質を感ずることができます。
(ちくま新書、税込み1012円)