【眼光紙背】新風吹かせ「筒井経団連」
2025.02.06 04:30
経団連の会長が「財界総理」と呼ばれる嚆矢(こうし)となったのは、東京芝浦電気(現東芝)社長を経て第2代会長を務めた石坂泰三だ。豪放磊落(らいらく)で政治にも直言、鳩山一郎政権に退陣すら迫った。高度成長期を通じ、財界総理は本家の総理にも匹敵する存在感を誇った。
筒井義信副会長(日本生命保険会長)が1月、第16代会長に内定した。非製造業出身で3人目、金融界からは初めての財界総理だ。
周辺は祝賀ムードかと思えば、金融業界以外の取材経験もある筆者には〝雑音〟も聞こえる。「財界総理も軽くなった」との皮肉や、「某電機大手会長がスタンバイしていた」との風聞も耳にした。
かつて経団連会長は自動車や鉄鋼など日本経済をけん引した業種、大企業の指定席だった。会長会社は政治献金を率先し、100人規模でスタッフを拠出した。平岩外四・第7代会長の出身である東京電力(現東京電力ホールディングス)の元幹部は「政官界との調整に疲弊した。楽しみは外遊の同行ぐらい」とこぼしたほど。
だが、産業構造は多様化しITなど第3次産業の比重が増した。十倉雅和会長(住友化学会長)自身が「製造業にこだわる時代ではない」と明言する。
一方、あらゆる産業の血脈となる金融の重要性は不変だ。筒井氏の出身の日本生命が国内最大級の機関投資家である点にも注目したい。
規制業種である金融業出身への懸念も聞かれるが、どの業種も監督官庁はある。十倉氏も「規制業種出身であるからこそ、政治や行政との関わりが多かった」として、政府への要望に生かせるとみる。資産運用立国に金融界の果たす役割は大きい。社会保障改革も筒井氏の民間保険からの視座が生きよう。
筒井氏が日本生命の企画広報部長時代、取材で接した。明敏で実直な人柄に感じ入り、同社や業界を背負う予感を抱いた。「筒井経団連」が経済界に新風を起こす期待とともに見守りたい。
(編集委員 柿内公輔)
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