【推薦図書】『科学的根拠(エビデンス)で子育て』(中室牧子著)
2024.12.20 04:30
【推薦者】金融庁総合政策局参事官・八幡 道典氏
勘と度胸に頼らない子育て
科学的根拠(エビデンス)に基づいて判断する。一見当たり前だが意外と難しい。行政分野でもEBPM(合理的根拠に基づく政策立案)が必要と言われて久しいが、まだ発展途上だ。本書の著者は、この分野の第一人者。約10年前、データを分析し、エビデンスベースで考えることの重要性を説いた「学力と経済学」は、そうした発想と縁遠かった教育分野に新風を吹き込んだ。
先日発刊された本書でも数々の仮説やエビデンスが示される。エビデンスには直観が正しかったことを証明するものもあるが、単なる思い込みだったと認識させられるものも多い。平均値と自分の直観のズレも分かる。「男女共学と別学とどちらか良いか」をエビデンスベースで説明されると面白い。男子校育ちの私の特質(偏り?)をエビデンスとともに示されると納得せざるを得ない。
もっとも著者はエビデンスを妄信するのではなく、合理的な判断を行う補助線として活用すべきと説く。至極腹落ちする。子育てや教育には誰しも一家言あるが、思い込みや誤った先人の教えも多い。子や孫の子育て・教育を考えてみたい人は読んでほしい。また仕事においても、とかく勘と度胸に頼りがちな方にもお勧めする。自戒の念も込めて。
(ダイヤモンド社、税込み1980円)