【推薦図書】『ほんとうの日本経済 データが示す「これから起こること」』(坂本貴志著)
2024.12.13 04:30
【推薦者】日本銀行調査統計局長・中村 康治氏
構造的人手不足の影響とその対処方法
人口動態の変動は予測可能性が高い。その経済への影響はゆっくりと、しかし、着実に生じる。本書は、人口減少がもたらす日本の経済・物価・賃金への影響をマクロとミクロの両方の視点から分析をしている。
本書は3部構成となっており、第1部ではマクロの視点から、人口減少がもたらす変化について論じている。需要不足から供給制約への変化、正規化が進む若年労働市場、賃金と物価の上昇傾向、省人化投資の増加などが指摘されている。
第2部では構造的人手不足社会における対処方法について、「機械化と自動化」が進むべき方向であることを示しつつ、人手不足感の高い、建設、運輸、販売、接客・調理、医療、介護の各分野における個別企業の具体的な取り組み事例について詳細に紹介をしている。
第3部では再びマクロの視点に戻り、人口減少がもたらす経済の未来予想を示す。人手不足の深刻化、資本による代替の進展、企業の合従連衡の活発化、賃金上昇と緩やかなインフレの定着など。そのうえで、社会選択として考えるべき論点を数多く提示している。
タイトルから本書の中身が分からないことが難点であるが、内容は人口動態がもたらす影響を包括的に論じた良書であることは間違いがない。
(講談社、税込み1100円)