苦情に学べ クレームとの違い 適切に理解を

2024.12.07 04:10
苦情に学べ
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苦情に学べ

先日、地域金融機関の職員さんから「上司にお客さまからの苦情について報告したら、その上司から『それは苦情ではなくクレームだよ』と言われました。苦情とクレームに違いがあると初めて知りました」との話を聞いた。


そこで今回は「苦情」と「クレーム」の違いについて述べてみたいと思う。


「苦情」とは、「1.他から害や不利益などをこうむっていることに対する不平・不満。また、それを表した言葉。2.苦しい事情(デジタル大辞泉より)」ということを意味する。この二つのうち、金融機関で主として使っているのは「1」、つまり、顧客の不平・不満といった感情を金融機関に言葉・文字などで伝えたい内容が「苦情」に当たるということである。


一方、「クレーム」とは「1.商取引で、売買契約条項に違約があった場合、違約した相手に対して損害賠償請求を行うこと。2.苦情、異議(デジタル大辞泉より)」ということを意味する。多くの金融機関役職員の方は「2」の意味で使うことが多く、「苦情」=「クレーム」となってしまっているのであろう。


しかし、「クレーム」とはそもそも英語claimで、その意味は「要求する、請求する、主張する、言い張る(weblio英和辞典より、一部省略)」である。


この日本語訳から考えると、「苦情」というよりも「何かを要求する」といった意味が本来強いと考えられる。


このことから、「苦情」と「クレーム」は顧客が何らかの害や不利益を被ったと感じた場合に行われる行為という点では同じであるが、「苦情」では不平・不満といった感情を金融機関に伝えることであり、「クレーム」は何かを要求する、例えば、「ここを改善してほしい」「こうした点を改良してもらえれば顧客利便がもっと向上する」といった要求・要望を伝えたい思いの方が強いと考えられる。


では、実務対応はどうなるのか。顧客の広い意味での「苦情」と思われるものを、その内容から「不平・不満」なのか「(何らかの)要求」なのかを分けて考えることである。


当然、これらが混在していることもあろうかと思われるが、その場合でもどこが「苦情」でどこが「クレーム」なのか分けることでより対応がスムーズと考えられる。


これからの時代「苦情」と「クレーム」の適切な理解が必要である。


金融監査コンプライアンス研究所代表取締役 宇佐美 豊

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