【推薦図書】『TSMC 世界を動かすヒミツ』(林宏文著・野嶋剛監修・牧高光里訳)
2024.12.06 04:30
【推薦者】みずほフィナンシャルグループ 取締役・平間 久顕氏
きらめくチップアイランド
「勤勉な国民性が生む脅威のコストパフォーマンス」「顧客と共に勝ち、共に栄える」「誠実、コミットメント、イノベーション、顧客からの信頼」。これらは、半導体受託製造の世界シェアの7割を握る台湾、そしてその中心にいるTSMC(台湾積体電路製造)の強さ、企業哲学について語ったものである。本書には、著名な台湾人ジャーナリストが30年に及ぶ取材をもとに描いたTSMCのリアルが詰まっている。
TSMCとソニー、デンソーの合弁会社であるJASMが熊本に立ち上げた半導体工場が間もなく量産を開始する。日本が強みとする半導体製造装置や素材、自動車をはじめ、半導体を使った製品の競争力を維持し高めるうえでも、世界で戦える半導体製造工程が日本に来た意義は大きい。
半導体市場は2030年までに1兆ドル規模へ成長するとも言われている。TSMCは研究開発と製造技術の先頭を走り続けるため、長期的な努力を積み重ねて世界一のファウンドリーとなった。そのたくましく、かつ合理的な企業文化も含めて学ぶところは多い。日本にとって半導体製造大国としての復活に向けて、日台のパートナーシップがいかに重要であるか、本書を通じて再認識させられた。
(CCCメディアハウス、税込み2970円)