夢育む資産形成コンサルタント【債券投資の利回り】の解答
2024.11.29 04:30クーポンの決定に影響を与える要因
債券の利回りを決める重要な要素であるクーポン(利子)は、債券を発行する主体、満期までの期間、中央銀行の政策金利の動向等によって影響を受けます。まず、株式と違って、債券を発行する主体は企業だけでなく、政府や地方公共団体まで多様です。国が発行する国債、地方公共団体等が発行する地方債、企業が発行する社債は、それらの債券を発行する主体の信用力によっておのおのの債券のクーポンの水準は決まってきます。信用力が最も高い(信用リスクが小さい)とみられている国債のクーポンは同じ満期までの期間の他の債券に比べると低くなっています。例えば、10月に発行された5年物個人向け国債のクーポンが0.51%に対して、同じ時期に発行されたトヨタファイナンスの5年物社債のクーポンは0.71%です。トヨタファイナンスよりも信用力があるとみられている政府の債券のクーポンの方が低くなっています。
満期までの期間については、期間の長い債券の方が、短い債券よりもクーポンは高くなっています。なぜなら満期までの期間が長い方が、債券を発行した時に約束したクーポンと額面金額が支払われる確実性が低下するというリスクをカバーするためだからです。例えば、10月に発行されたトヨタファイナンスの社債のクーポンをみてみると、先ほど述べたように5年物は0.71%ですが、3年物は0.573%となっており、満期3年の方が満期5年物よりも低くなっています。
中央銀行がコントロールする政策金利が引き上げられると他の金利も上昇するので、クーポンも上昇します。問題編で述べたように金利が上昇すると国債等の債券の価格が下落してしまうので、市場では中央銀行の金融政策の運営に深い関心を寄せています。
利回りの計算
債券の利回りは、債券投資によって得られるリターンを投資金額で割ることによって求めることができます。債券投資のトータル・リターンは、クーポン収入のインカム・リターンと売却価格と買い入れ価格の差を所有期間で割った1年当たりの売却損益であるキャピタル・リターンで構成されています。これらのリターンを使った利回りとしては、所有期間利回りがあり、次のような式で計算することができます。
例えば、94.56円で買い入れた債券を2年後に96円で売却したとします。クーポンが3円だとすると、この債券の1年当たりの所有期間利回りは、{3+(96-94.56)÷2}÷94.56=0.0393(=3.93%)となります。
発行時に買い入れた債券を満期時まで保有した時の利回りは応募者利回りと呼ばれ、上の式において売却価格を額面金額に、買い入れ価格を発行価格に置き換えることによって計算することができます。
クーポンの再投資も勘案した最終利回り
所有期間利回りは、クーポン収入のインカム・リターンと売却損益のキャピタル・リターンを使って求められますが、これらのリターンに加えてクーポンの再投資による収入も勘案した利回りを複利ベースの最終利回りと呼んでいます。
最終利回りは、債券投資から発生する将来キャッシュフローを現在価値に割り引いた理論価格を使って求めることができます。例えば、満期が3年で、年1回3%のクーポンが支払われ、満期時には額面金額100円が確実に支払われる3年物利付債の理論価格を求めてみましょう。この債券のキャッシュフローは、以下のようになります。
1年目のクーポン:100×0.03=3(円)
2年目のクーポン:100×0.03=3(円)
3年目のクーポンと額面金額:100×0.03+100=103(円)
この債券の最終利回りは、これら将来のキャッシュフローを現在価値に戻す割引率として求めることができます。最終利回り(割引率)をrとすると次の図のようになります。
この債券の現在の市場価格が94.56円であるとすると、以下のような式から最終利回りを求めることができます。
この3次方程式をエクセルの表計算ソフトのIRR関数を用いて解くと、最終利回り(r)=5%が求められます。
債券の利回りと価格の関係を確認する
問題編にあった債券の利回りと価格は逆の動きをする点について数値例で確認してみましょう。上で取り上げた3年物利付債について、現在の価格が94.56円の時、利回り(r)が5%であると計算することができました。ここで利回りが6%に上昇した場合の債券の価格(B’)を上の式を利用して求めてみます。
利回りが5%から6%へと上昇すると、この債券の価格は94.56円から91.98円へと下落することが分かります。このように利回りの変化が債券価格を変化させるリスクを、金利リスクと呼んでいます。
解説
利付債を保有している投資家は、毎年クーポンを受け取り、満期時には額面金額と最後のクーポンを受け取ります。一方、割引債を保有している投資家は、クーポンの受け取りはなく、満期時に額面金額のみを受け取ります。
固定金利の利付債に投資した場合、投資家が将来受け取れるキャッシュフロー(クーポンと額面金額)はあらかじめ決められています。従って、その利付債の将来キャッシュフローを現在価値に割り引いて、それらを合計すると、当該利付債の理論価格を計算することができます。
債券の価格と利回りの間には「利回りが上がると債券価格が下落し、利回りが下がると債券価格が上昇する」という負の相関関係が存在します。
金利が変化した場合に債券価格が変化するリスクは、金利リスクと呼ばれています。
正解は A
※本コーナーは、資産形成コンサルタント資格(公益社団法人日本証券アナリスト協会)テキスト・問題集をもとに編集したものです。