【眼光紙背】破天荒な主に脇を締めよ
2024.11.14 04:30
米大統領として国境に壁を築き、温暖化や経済を巡る国際的枠組みを脱退。支持者の暴動を巡り起訴もされた。ホワイトハウスに破天荒な主が帰還する。
「政治では何事も偶然に起こりはしない」。大恐慌と闘った大統領、フランクリン・ルーズベルトの言葉だ。トランプ氏の返り咲きすら〝必然〟なら何ゆえに。争ったハリス副大統領の準備不足に加え、バイデン政権への国民の不満が最後まで響いたと映る。経済面ではインフレと格差拡大が低中所得者層をむしばんだ。所得格差は1920年代以来の水準との調査もある。
トランプ氏は終盤、「4年前より生活は良くなったか?」とシンプルな問いを連発した。有権者の45%が「苦しい」と答えた調査が下敷きで、実は80年大統領選でのレーガン氏の決め文句。民主党が強い非白人や若者層にも刺さり、激戦州を完勝したトランプ氏にも切り札となったか。
ただ、トランプ氏が政策論争を制した感は薄い。筆者が米国で共に働いた知人は穏健な共和党支持者だが、「鼻をつまんで投票した」とこぼす。米国人らしい表現で、粗野なトランプ氏は嫌でも民主党政権にお灸を据えなければというわけ。
トランプ氏復活の舞台は視界不明瞭だ。外交面は米国の抑止力が後退し、自由主義陣営の盟主としてのプレゼンスが低下。ウクライナ紛争や中東問題を即刻解決するという公約が空手形に終わらぬ保証はない。緊張が続く東アジア情勢も日本には気がかり。
米経済も軟着陸できるか正念場だ。今の格差拡大は皮肉にも、富裕層に恩恵大なるトランプ政権1期目の減税が影を落としているとの指摘がある。通商面ではまたもや「米国第一主義」で高関税を宣言。各国で製造業を中心に貿易・投資への影響を懸念する声が上がる。
翻って本邦は政権が〝液状化〟の様相。日米関係が安定せねば日本経済も揺らぐ。米新政権との対峙では脇を締め、国益を損なってはならない。
(編集委員 柿内公輔)
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