【推薦図書】『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』(ビル・パーキンス著・児島修訳)
2024.09.27 04:30
【推薦者】野村アセットマネジメント取締役兼専務・本間 隆宏氏
資産を取り崩す勇気
本書の主張はシンプルだ。「やみくもに節約や貯蓄に励むのではなく、その時にしか出来ない経験にお金を使うべき」「人生は経験の合計だ。経験から得られる思い出こそが人生を豊かにする」「お金を使わずに死んでしまっては、人生の貴重な時間を無駄に働いて過ごしたことになる」。
必ずしも目新しい提言ではないかもしれない。時は金なり、人生は一度きり、お金はお墓に持っていけない、といった言葉は誰にもなじみがある。それでも本書は内外で共感を呼び、ベストセラーになった。漠然とした不安からやりたいことを先延ばしにする私たちに、お金を減らす勇気を与え、背中を押してくれるからだろう。
内閣府の2024年度の年次経済財政報告によると、家計の金融資産は60~64歳でピークを迎えるが、85歳を過ぎても資産の減少率はわずか1割台半ばだという。特に金融資産の大半を占める預金はほとんど減らないらしい。海外の富裕層に限らず、平均的な日本の家計はお金の大半を使いきらずに死んでいる。資産を相続する子供も既に高齢で、やはり老後の不安からお金を使わない。資産形成の重要性は広く知れ渡るところだが、資産の取り崩し方についてももっと考えていく必要があるだろう。
(ダイヤモンド社、税込み1870円)