【眼光紙背】大統領選、胸突き八丁へ
2024.09.19 04:30
米大統領選のテレビ討論会が行われた9月10日。テイラー・スウィフトさんのインスタグラムの閲覧数が跳ね上がった。「ハリス(副大統領)に投票する」。もともと民主党支持とはいえ、世界的な歌姫の満を持しての表明は若者や女性を動かすかもしれない。
バイデン大統領のよもやの撤退で急遽(きゅうきょ)〝代役〟に担がれたハリス氏は、当初の混乱を思えば善戦している。
一般紙で米国特派員も務めた筆者は筋書きのないドラマの数々を目の当たりにした。大統領選には潮目が変わる局面が何度かある。直接対決した討論会も、追う者が差を詰める絶好の機会。米メディアの多くがハリス氏に軍配を上げ、私から見ても共和党のトランプ前大統領と互角以上に渡り合った印象だ。
もっとも、足場は固めても優勢まで手繰り寄せてはいない。討論会を主催したABCテレビは左派寄りで、トランプ氏はよく耐えたとの見方もある。よりリベラル派のニューヨーク・タイムズ紙の最新世論調査でトランプ氏は支持率で上回り、同紙も「驚くほど粘り強い」と舌を巻く。
所得減税の恒久化を掲げるトランプ氏に対し、ハリス氏は大企業や富裕層に増税する姿勢。トランプ氏のシンパが多いウォール街も、ハリス氏には身構える。カリフォルニア州司法長官時代に大手行の不正を追及、その後も金融取引の課税強化を主張した経歴があるのは、日本の金融界にも気がかりか。
出遅れたハリス氏にとって、掲げる政策への理解を周囲が深める時間は限られる。しかも、良くも悪くも一貫したトランプ氏に対し、最近の彼女の主張は揺れが目立つ。中道穏健派でやや左派的なスタンスから、無党派層を意識してか、規制強化的な政策を声高に訴えなくなった。
討論会の第2ラウンドが行われるかは不明だが、レースはここから胸突き八丁。決着前に国内では新首相が誕生する。日米のリーダー交代を市場はかたずをのんで待ち受ける。
(編集委員 柿内公輔)
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