【推薦図書】『統計学の極意』(デイヴィッド・シュピーゲルハルター著、宮本寿代訳)
2024.09.13 04:30
【推薦者】日本銀行調査統計局長・中村 康治氏
データ分析の取扱説明書
ビッグデータ分析やEBPM(合理的根拠に基づく政策立案)がはやっている。昔とは比較にならないくらいの大量のデータが利用可能となり、そのデータを効率的に処理できるソフトウェアやデータインフラ、また、それらを支える技術革新が発展してきたおかげである。しかし、それで我々は、世の中を正しく理解し、効率的な政策を行うことができるようになったのであろうか?
本書は、医学統計学のエキスパートであり、英国統計学会長を務めた著者の長年の研究成果と経験を踏まえたデータ分析の取扱説明書である。著者は、データ分析におけるさまざまな落とし穴について警告を行っている。取得したデータが、分析対象となる母集団の性質を正しく反映したものでない場合、誤った結論を導くことになる。また、統計学の基本である、相関関係と因果関係の違いについても、さまざまな角度から説明を行っている。
ビッグデータの利用は必ずしも統計分析の信頼性を高めることにはつながらず、意図的に悪用されることもありうる。データ分析を管理する人や利用する人が騙(だま)されないためにも、統計の取り扱いについて基礎的な知識を備えておくことは重要である。平易な言葉で知識を提供してくれる本書は手元に置いておきたい一冊である。
(草思社、税込み3080円)
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