【推薦図書】『法隆寺を支えた木[改版]』(西岡常一・小原二郎著)
2024.09.06 04:30![推薦図書『法隆寺を支えた木[改版]』(西岡常一・小原二郎著) 推薦図書『法隆寺を支えた木[改版]』(西岡常一・小原二郎著)](https://img.nikkinonline.com/wp/wp-content/uploads/2024/09/online20240906_016t.webp)
【推薦者】金融庁総合政策局参事官・八幡 道典氏
適材適所の本質が分かる傑作
日本には木造の建築物が多い。法隆寺はその最古のものだ。木材が選択された理由は、ヨーロッパの城郭やエジプトのピラミッドよりも堅固さの面では劣るが、コンクリートや鉄筋がないので仕方なかったからだと思っていた。しかし大いなる勘違いだったようだ。
木には、伐採されるまでの第1の生と、建物として活用されてからの第2の生があり、第2の生の初期は、むしろその強度を増すのだそうだ。その後、だんだん弱くはなるが、建立後、1300年が経つ法隆寺の心柱は、今も当時と同レベルの強度を保つ。古いバイオリンの音色が新しいものよりも優れているのも同じ原理だそうだ。
本書は、法隆寺の修復に携わった宮大工の西岡氏と、学者の小原氏による共著。経験と直観で木の特性を熟知する宮大工の言葉を、学術的な観点から補足する形式となっている。飛鳥時代には理論的な解明はされていなかったはずだが、ヒノキが適材として選ばれ、木のクセをうまく活用して建立されたという当時の技術者の知恵と能力は驚愕(きょうがく)だ。
本書には、同じヒノキでも地域によって性質が異なるといった興味深い事実が多く盛り込まれている。歴史のロマンと知的好奇心を満たしたい方にお勧めする。
(NHKブックス、税込み1430円)
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