地銀、農業基盤再構築に関与 大規模、スマート化で
2024.09.01 04:50
食料・農業・農村基本法が6月、約25年ぶりに改正された。最大の目的は食料安全保障の強化だ。高齢化による農業従事者の減少が深刻となるなか、食料を安定供給するため、農業生産基盤の再構築が迫られている。農業経営の大規模化やデジタル技術によるスマート化が今後進むとみられ、地方銀行には融資だけでなく、経営助言や販路開拓支援などに関与する場面が増えそうだ。ただ、農業分野への融資には慎重な銀行も多く、姿勢が変わるかが注目される。
高齢化を背景に農業従事者は減り、耕作地も減少する流れだ。農林水産省によると、2022年の農業従事者は、00年の約半数の123万人。70歳以上が6割近くを占める。三菱総合研究所の推計では、50年の耕地面積は20年比36%減の270万ヘクタール、農業産出額は同50%減の4兆5000億円、家族経営と法人経営を合算した農業経営体数は同82%減の18万となる見通し。
「農地集約による経営の大規模化やスマート化は、地銀にとって商機となる」と関係者は口をそろえる。農業経営体の法人経営だけを切り出せば、50年は同29%増の4万になる見通しだ。1法人当たりの経営規模が大きくなれば、設備や運転資金のニーズが高まる。地域の農業協同組合では対応しきれず、地銀や日本政策金融公庫の融資機会が増える。販路開拓のサポートのほか、M&A(合併・買収)や事業承継など課題解決の支援を求める声もある。
日本公庫が運営する「農業経営アドバイザー制度」の資格保有者数は4月時点で4157人。うち民間金融機関は2388人。農林水産事業本部の担当者は「農地法が抜本改正された09年から数年間は、受験者数が大幅に増加した。企業による農業参入が緩和されたことが要因」として、農業に対する注目度と受験者数が比例するとの見方を示した。
農業には、気候や販売価格の変動など固有リスクがあり、慎重な姿勢の銀行が少なくない。ある地銀関係者は「信用力を見て融資しているが、農業分野はノウハウがなく、避ける傾向がある。ただ農業が主要産業の地域もあるため、日本公庫との協調融資から入ることになる」と話した。
※この記事は2024/10/15にfree記事に変更しました。