【推薦図書】『観光地経営でめざす地方創生』(原忠之著)
2024.08.30 04:30
【推薦者】みずほフィナンシャルグループ取締役・平間 久顕氏
観光立国の第2ステージに向けて
夏休みに国内を旅行された方も多いと思う。最近本当に多くの外国人旅行者を見かけるようになった。有名な観光地は人であふれ、清水寺を経由する京都市バスや原爆ドームに向かう広島の路面電車は時に乗り切れないほどの混雑ぶりである。いわゆるオーバーツーリズムは、日本が誇る自然や文化、そして地域の生活に負荷をかける。
2040年までにインバウンド年間来日客数8千万人、その観光消費総額は年間25兆円という試算がある。足元日本の自動車輸出総額が十数兆円なので、近い将来、観光業は圧倒的な日本の基幹産業となり得る。しかも、素晴らしい観光資源が地方にあり、いながらにして世界の経済成長を地方経済に取り込める可能性がある。
そこで、コーディネーターとして重要な役割を果たすことが期待される組織、それがDMO(Destination Marketing Organization)である。著者は、長年米国の大学で教壇に立つホスピタリティ経営学の権威であり、本書は、世界標準のDMOが各地域の司令塔となって、観光産業を活用して域外からの来訪客の消費を喚起し、雇用の創出などを通じて、地域の生活を豊かにできることを示す提言の書である。
(柴田書店、税込み3080円)