銀行株が急回復 日銀期待後退も上昇余地 保有株売却など買い材料に
2024.08.22 04:35
銀行株は8月5日の大暴落から急回復している。日本銀行の早期利上げ観測が後退したことで追い風は弱まっているものの、政策保有株式の売却動向や業績などが材料視され、投資家の強気姿勢が続く可能性がある。ただ日米の金融政策や政治イベントは波乱要因になり得る。
東証銀行業株価指数は米景気後退懸念の高まりを背景に8月2、5日の2営業日で26.42%下落し、東証株価指数(TOPIX)の下落率(17.63%)を超えた。その後、買い戻しの動きが広がり、同指数は5日の262.62ポイントから19日には322.78ポイントまで回復。同日時点の年間上昇率は28.91%となり、TOPIXの11.61%を上回る水準だ。
JPモルガン証券の矢野貴裕アナリストは「利上げ期待がすぐに戻るかどうか、見通すことは難しい」と現状を分析。今後は「11月の上半期決算までは政策保有株式の売却などが材料視される」とみて、大手行を中心に本業収益に上乗せされる株式売却益などの拡大が買い材料と予想する。
Y'sリサーチの山田能伸代表は銀行株の見通しについて「長期的には政策金利が0.5%の先に行く可能性がある。ネガティブになる必要はない」と強調。二番底を警戒する声もあるが、「リーマン・ショック時より経済の実態は悪くない」とみる。
7月の日銀による政策金利引き上げと相場の急変が重なったことで、市場や政府、世論が追加利上げを疑問視する可能性もある。SMBC日興証券の佐藤雅彦シニアアナリストは8月14日付けのレポートで「今後、日銀が従来描いていたような利上げができない、それに伴って銀行株が失速するリスクを考えるとすれば、このミスコミュニケーションがリスクになり得る」と指摘。米国の景気後退やドル安・円高の進行もリスク要因だ。