【眼光紙背】有事以外でも輝く「金」
2024.08.15 04:30
閉幕したパリ五輪の余韻にひたるわけではないが、金(きん)にまつわる話題を。「なぜプラチナよりゴールドの会員ランクが低いのか」。カード会社の知人が新人から真顔で聞かれ返答に窮したそうだ。
若年層には案外笑い話でもなかろう。国際的指標のニューヨーク先物で金の価格は2015年にプラチナを追い抜き、大差がついた。昨今のプラチナは貴金属より工業の需要が強いこともあるが、「金より高級」という社会的イメージは相当色あせた感がある。
ニューヨーク金先物価格は今月最高値を更新。株式市場のボラティリティーが激しく、逃避した資金が安全資産とされる金に流入しているとの指摘を多く聞く。
ただ、「有事の金」もかつての”常識”かもしれない。金の値動きは株式と逆相関と言われるが、近年は株高と金高が同時進行する例も多く、今年も半ばまでそうだった。
機関投資家には、株高で手にした余剰資金を金に振り向ける動きもあるようだ。だが、近視眼的なリスクヘッジや運用だけでなく、「分散」の観点で金を求める傾向が強まっているように感じる。
最たるものが各国当局で、中央銀行が金の保有を増やしている。米国の財政不安を宿したドルの信認低下が背景とされ、購入規模が目立つ中国やロシア、インドなどは米国と覇権を競う存在だ。基軸通貨への依存回避もあろうが、自国の通貨に取って代わる力がないのも冷静に見定めたうえでの戦略だろう。
個人にもポートフォリオやインフレ対策でニーズがあり、金上場投資信託(ETF)は流動性も高く、株式に近い感覚で投資できると人気。欧米の利下げ機運も相対的に金の選好につながる。
もっとも、国内は久々に金利ある世界への回帰で、金利商品の投資妙味が増す。分散目的での金投資が浸透するかは不透明だ。
紀元前から装飾で価値を認められ、通貨にもなり、人類を魅了してきた金。今後も輝きは不変だろうか。
(編集委員 柿内公輔)
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