【眼光紙背】巨艦ファンドの移ろい

2024.08.01 04:30
眼光紙背
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投資商品に流行語大賞があれば、今年の〝当確〟候補だろう。全世界株型(オール・カントリー)投資信託、通称「オルカン」だ。なかでも三菱UFJアセットマネジメント(AM)の「eMAXIS Slim全世界株式」は、国内公募株式投信の資金流入額で上期トップ。本紙読者は説明不要だろうが、流行のインデックス型で新NISA(少額投資非課税制度)も追い風に快走。運用部隊に迫った特集や番組もメディアで見かける。思い重ねるのが、一昔前にやはり社会現象になった投信「グローバル・ソブリン・オープン」。「グロソブ」の愛称で呼ばれ、運用会社が三菱UFJAMの前身なのも、どこかオルカンに通じる。


もっとも、こちらの運用はソブリン債対象でアクティブ型と随分異なる。インデックス型隆盛の昨今だが、グロソブのピーク時純資産(2008年8月、約5兆7000億円)は今も破られぬ投信のトラックレコード。当時は債券の運用成績が相対的に良かったこともあるが、今や純資産は3000億円に満たない。


2000年に登場した「ノムラ日本株戦略ファンド」も、国内初の1兆円ファンドと話題になったが、ITバブル崩壊で資金が流出し細っていった。ことほどさように、投資商品の運用や資産クラスのトレンドは移り変わる。欧米に比べて歴史も厚みも浅い国内の投信市場ならなおさらだ。


顧客に見合う商品も一様でない。富裕層にオルカンは物足りないやもしれぬ。手数料が少々かさんでも期待リターンがより高い商品のニーズはあろう。グロソブの運用会社で系列銀行出身の幹部は当時、「世間の期待が重い」と肩をすくめていた。プロパーではないがゆえに、独り歩きする虚像とのギャップを感じ取っていたのかもしれない。


足元では市場のボラティリティーが増し、巨艦ファンドも運用部隊も試練の局面。周囲も実像を見失わないよう目を凝らそう。


(編集委員 柿内公輔)


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