【推薦図書】『新版チェルノブイリ診療記 福島原発事故への黙示』(菅谷昭著)
2024.07.26 04:30
【推薦者】全国労働金庫協会専務理事・西村良隆氏
今あらためて考えたい原発事故の事実
チェルノブイリ原発事故の影響を受けて甲状腺がんになった子供を助けたい――。前松本市長で外科医である若き日の菅谷昭さん(著者)は、1996年、当時の信州大学助教授の職を捨て、単身ベラルーシの首都ミンスクへ。本書は、5年余りにわたって劣悪な医療環境のなかで数多くの子供を救うことに尽力するかたわら綴(つづ)った貴重な診療記に福島第一原発事故の警告を加筆した迫真のリポートです。
モスクワの中央政府の原発禍の初期対応と小児甲状腺がんの異常増加。放射性ヨードに関する初期対策とその因果関係の推測に胸が痛みます。隣国のポーランドでは、事故直後から全国民に無機ヨードを服用させ、小児甲状腺がんの増加が見られていない事実。
さらには、発症後においても複数回の手術を余儀なくさせる劣悪な医療環境。子供たちは、その幼く小さい肩に、苦しみや悲しみをたくさん背負いながら、治療に耐えて、健気(けな)げに生を紡ぐ。
なにごとにも代えることができない大切な子供たちの命、健康、その未来。不条理な現実。
ただ、著者は記す。表層的な知識、短絡的な理解に基づく感情的な物言いは不要。大切なことは、自分はいかに生き、何ができるのか。それぞれに一歩踏み出すことを促すような一冊です。
(新潮文庫[版元に在庫なし])
関連キーワード
おすすめ
アクセスランキング(過去1週間)
- 北陸銀と北海道銀、営業支援システム導入 年18万時間の作業削減
- 金融界、「隠れリース」特定に本腰 27年の新基準適用迫り
- 群馬銀、ストラクチャードファイナンス3年5.7倍 RORA向上に寄与
- 金融庁、決算書入手方法を調査 地域金融の実態把握へ
- 京都中央信金、理事長に植村専務が昇格 白波瀬氏は代表権ある会長へ
- 福井銀、野村証券と包括提携2年 預かり残高5000億円超
- 固定型住宅ローン、金利〝決め方〟見直し機運 参照指標「再検討」も
- メガバンク、上場廃止増えLBOローン好調 三菱UFJ銀は管理高度化
- 信金、店舗減少が小幅にとどまる 職員数推移との格差鮮明
- 地域銀・信金、NISA口座伸び悩む 3カ月の増加率1%