【推薦図書】『木のいのち 木のこころ<天・地・人>』(西岡常一、小川三夫、塩野米松著)
2024.07.19 04:30
【推薦者】信金中央金庫常務理事・高橋 裕司氏
現代にも通じる普遍的な人間観
この本は、私が初めて支店長職に就く際に、先輩から手渡された一冊である。あれからすでに十数年が経過しているが、折に触れて読み返すたびに違った気づきを与えてくれる。
1400年以上も建ち続ける日本最古の木造建築物、法隆寺の宮大工で「最後の宮大工」とも言われる西岡常一棟梁(とうりょう)の“ことば”を聞き書きした書である。その語り口調もあって、関東出身の私は当初こそ読み進めに苦労したものの、数年の近畿勤務を経験した今では、その思いや考えを直接聞いているように感じられるまでになった。
この書では、宮大工という仕事、木との関わり、木への造詣のほか、徒弟制度という現代では極めて特殊な職人を育てるための独自の育成観が語られている。木はよく見るとそれぞれがふぞろいで癖があり、人間も同じ。一つとして同じものはないなかでどう見極め、育て、調和させていくのかが、長い将来を見据えた知恵として語られており、現代にも通じる普遍性に気づかされる。
もし法隆寺を訪ねる機会があれば、事前にこの本を一読することを、ぜひお勧めしたい。実際に使われているふぞろいな柱を見つけると、「すぐに帰らんとよく見て」という“ことば”の意味を実感できる。
(新潮社 税込み1155円)
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