苦情に学べ ノルマ廃止時の原点に回帰を

2024.06.08 04:10
苦情に学べ
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「苦情等」が発生する要因の一つがいわゆる「販売ノルマ」(販売目標)であるとよく言われる。「販売ノルマ」の必達というプレッシャー(当然、自分の評価を下げたくないという思いからであるが)から、販売担当者が顧客本位の業務運営という基本的な考え方や自金融機関のルールに反してリスク性商品を販売してしまい、結果、顧客からの「苦情等」を発生させてしまうとよく言われている。


そうであれば、こうした「販売ノルマ」を廃止してしまえば「苦情等」も減るのではないか。


ニッキンの記事にこんな見出しのものがあった。「投信販売、ノルマ廃止広がる」「40行が個人目標なし」。


また、その記事には「顧客の意向に沿った提案しやすい体制を作っている」「フィデューシャリー・デューティーへの取り組み状況も業績評価項目にしている」とあり、「苦情等」を減らす観点から言えば、大変良い方向に向かっているとの内容になっている。


地域銀行の投信営業における業績評価基準項目


しかし、この記事は2019年9月6日号のニッキンに掲載されていたものである。なんと、5年も前である。仮に各金融機関がこうした方向で、適切な対応を5年も行っていれば「苦情等」は急激に減るはずである。


だが、現状はどうか。必ずしも「販売ノルマ」を原因とした「苦情等」は減っていないのではないか。


要因として一つは、結局「販売ノルマ」というものが形式的には廃止されているが、営業実態としては厳に存在しているということであろう。この点、コロナ禍を経て「販売ノルマ」が復活している地域金融機関もあると聞く。


19年と言えば、金融庁から「顧客本位の業務運営に関する原則」が最初に公表された年である。金融庁からは継続的にニュースリリースがなされているが、各地域金融機関はどうか。


もう一つは、コロナ禍を経て地域金融機関における収益確保が難しくなっていることが挙げられる。19年以前の営業態勢、販売意識がゾンビのごとく復活しているのではないだろうか。


「販売ノルマ」、これを廃止することは形式的には可能であろうが、「顧客保護」「フィデューシャリー・デューティー」のより一層の推進を求められている現状の環境を踏まえれば、19年当時に原点回帰し、各地域金融機関はこの点を再度検討すべきであろう。


【金融監査コンプライアンス研究所代表取締役 宇佐美 豊 氏】

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