【推薦図書】『幸いをいただきまして このひとときを大切に』(塩沼亮潤著)
2024.06.07 04:30
【推薦者】内閣官房内閣審議官・八幡 道典氏
心に響く、大阿闍梨の珠玉の名言
金剛峯寺1300年の歴史で2人しかいない千日回峰行の満行者の著者。たまたまその講演を聞く機会があった。当時はあまり予備知識もなかったが、荒行を達成した大阿闍梨(だいあじゃり)とは思えないソフトな語り口、腹落ちする話に魅了され、もっと知りたいと思い本書を購入した。
本書の特徴は、さっと読めるのだが、繰り返し読むとまた新しい気付きがあることだ。引用したいフレーズはたくさんあるが、例えば「心をこめて語るから、相手の心に伝わります。心をこめて行うから、みんなが感動してくれるのだと思います」。私も講演の機会を頂くことがあるが、素人がウケを狙ってみてもだいたい失敗する。コンサル的なハウツーも役に立たないわけではないが、根底にあるべきはこれだと思う。
もう一つエピソード。先日、妻と喧嘩(けんか)になった。妻に折れる気配がなく、当面、修復困難と思い、出勤した。帰宅すると家庭に笑顔が戻っていた。「忘れて、捨てて、許す。この寛恕(かんじょ)の心が人生を変えます」。書評を書こうとテーブルに置いていた本書の一文が妻の目に入り、読んだとのこと。心が急にほぐれ、穏やかな気持ちになったという。
本書は家庭円満にも効果があるらしい。また新しい気付きを得た。
(幻冬舎、税込み1430円)