【眼光紙背】「ガラスの天井」を砕け
2024.06.06 04:30
2016年、米史上初の女性大統領に最も近づいたヒラリー・クリントン氏は「最も高く硬い『ガラスの天井』を破りたかった」と惜敗に唇をかんだ。
見えない障壁が長く女性のキャリアアップを阻んできた。金融界も同様で、優秀な人材は外資系に多く身を寄せた。ジェイ・ボンド東短証券の斎藤聖美代表取締役も米モルガン・スタンレー出身。リーマン・ショックの頃に投資銀行の取材で面識を得たが、「実力さえあれば存分に働けた」と話してくれた。
だが、女性活躍推進法も施行され、金融界全体に女性の存在感は増しつつある。金融ジャーナル誌(22年5月号)での三菱UFJリサーチ&コンサルティングの矢島洋子氏の分析によれば、20年度の正社員に占める女性は全産業平均の約27%に対し、金融業は約53%。16年度から約13ポイント上昇した。
経営層での抜擢も進む。4月に就任した工藤禎子・三井住友銀行副頭取は3メガバンク初めての女性NO.2。山陰合同銀行の吉岡佐和子氏は6月、地域銀で珍しい生え抜きの女性代表取締役専務執行役員に就く。
ただ、役員候補ともなり得る管理職の女性は20年度で14%にとどまり、女性社員の多さの割に寂しい業界の課題もうかがえる。政府が「女性版骨太の方針」で掲げる30年までに女性役員比率30%以上への道のりは遠い。
矢島氏の指摘で興味深いのは、女性のキャリア停滞が「男性社員の意識にもネガティブに働いている可能性がある」という点だ。さらに、法人営業・融資への女性配置のみならず、テラーへの男性配置など、性別や年齢にとらわれず、能力・適性に応じた配置が望ましいとしている。
斎藤氏は数年前のある就活メディアの取材に、「金融はエキサイティング。20代に戻っても選ぶと思う」と後輩たちにエールを送っていた。金融界のガラスの天井にもひびは入り始めた。いずれは砕け散り青空を見渡せる日を待ち望む。
(編集委員 柿内公輔)
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