【推薦図書】『魔術師と予言者』(チャールズ・C.マン著、布施由紀子訳)
2024.05.24 04:30
【推薦者】みずほフィナンシャルグループ取締役・平間久顕氏
持続可能な未来をどのように構想するか
4月に開催された主要7カ国(G7)の気候・エネルギー・環境相会合は、気候変動問題について一歩踏み込んだ共同声明をまとめて閉幕した。脱炭素と安定的なエネルギー供給を両立させるためには、イノベーションの促進と考えうる解決策のすべてを使う総力戦で、実現可能な道筋を探らなければならない。
人口増加による食料・水・エネルギーの不足をどのように解決するか、そして膨張する人間の欲望から生じる望ましくない現象である気候変動という問題に、これまで世界のさまざまな科学者が格闘してきた。本書は、このような挑戦と失敗の史実を丹念に取材した科学ジャーナリズムの大作である。
本書がユニークなのは、科学者を二つのタイプ、すなわち、人間は環境の制約を受ける存在であり、持続不可能となる前に習慣の修正や政策の改変が必要という立場(これを予言者派という)と、人間の知恵と創意工夫が限りなく可能性を広げてくれるので、まだまだ成長・発展できるという立場(これを魔術師派という)に描き分けていることである。著者は、どちらがあるべきかについて語っていない。ありたき未来の姿と望ましい打ち手とは何か、読者一人一人に考えてほしいということだろう。
(紀伊國屋書店、税込み4950円)
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