【推薦図書】『経済学の壁』(前田裕之著)
2024.05.17 04:30
【推薦者】東和銀行取締役常務執行役員・鈴木 信一郎氏
経済学の多様性を学ぶ
私が大学3、4年生のころ所属したゼミの先生が、享年99歳で2023年逝去された。先生は私が在学中すでに近代経済学の大御所的立場にあったが、訃報に接し、当時ゼミで学んだ経済学の近況を概観したい気持ちとなり本書を手にした次第である。
筆者は日本経済新聞社在籍時の著名記者でもあり、経済学の歴史に関するさまざまな著作を参照しながら、「経済学の中身は多様であり私たちは状況に応じてうまく使いこなすべきである」と一貫している。私がかつて学んだ新古典派総合の経済学は、不況時には政府の介入を求めるケインズ経済学と平時には市場の働きに任せる新古典派経済学の折衷であるが、その分析モデルでは、各経済主体が完全な情報を得て効用を最大化するように行動するとしていた。
一方、その後の行動経済学や神経経済学は現実の人間像としての限定合理性を原点としており、複雑な経済社会の実態に応じて、より納得感ある説明を期待できそうである。
さて、前述の先生との直接のコミュニケーション機会はさほど多くなかったが、その圧倒的な存在感や真摯(しんし)な研究姿勢、教育者としての熱き思いは私のなかに長く留まることとなった。本書との出会いを含めて先生のご指導には心から感謝している。
(白水社、税込み2420円)
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