苦情に学べ モニタリング結果から読み解く

2024.05.11 04:10
苦情に学べ
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苦情に学べ

今回は、先日金融庁から公表された「リスク性金融商品の販売会社等による顧客本位の業務運営に関するモニタリング結果(2023事務年度中間報告、表)」から読み解くことができる「苦情等」について考えてみたい。


外貨建一時払保険を販売した顧客層の検証結果


そもそもこのモニタリング結果は、金融庁が販売会社及び組成会社による顧客本位の業務運営を確保するために行われている。モニタリング結果のうち、注目すべきは「ターゲット型保険に関する販売・管理態勢の検証結果」の「顧客層の検証結果」であろう。
 そのなかで「元本毀損(きそん)するとは聞いていない」といった苦情について、金融庁が分析した結果として、当該保険を販売した顧客のうち2割で知識・投資経験の不足や投資方針との不一致について懸念があり、苦情が発生した顧客に限ればその割合は3割弱とのこと。
 また、販売動機についても分析をしており、ターゲット型保険については、乗換販売といった顧客にとって経済合理性があるとは言えない事例が数多く確認されているとのことであった。
 この分析をどう捉えるか。まずは、金融庁のこうした分析方法により自金融機関に寄せられるリスク性商品の苦情等について分析してみてはどうか。つまり、「元本毀損」に係る苦情について、顧客の意向やその投資経験との関連性について、自金融機関の分析を行ってみることであろう。
 そうすれば、何らかの傾向などを読み解くことができ、その結果、適切な対応策を策定・実践することも可能になるのではないだろうか。
 次に、こんな捉え方もできるではないか。リスク性商品の苦情を発生させないために、顧客に対して「元本毀損」に係る説明については、現状以上に時間と資料などによる顧客理解の促進を行うことである。具体的には、(1)知識・投資経験に係る確認のプロセスの見直し(2)販売時の投資方針の更なる確認と説明ツールの改訂(3)販売する行職員に対する研修などに際しての顧客の知識・経験と投資方針のさらなる確認の徹底――などがあろう。
 今回のモニタリング結果について、苦情を発生させないためのヒントがいくつか見受けられる。本部のリスク性商品統括部署だけでなく、実際に支店などで販売を行う人々も1度目を通しておくべき内容である。


【金融監査コンプライアンス研究所代表取締役・宇佐美 豊 氏】

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