【推薦図書】『華麗なる一族』(山崎豊子著)
2024.04.19 04:30
【推薦者】フリーファイナンスラボ社長・小村 充広氏
私の聖地巡礼~志摩半島の観光ホテル
3年ほど前、長年気になっていた志摩半島の観光ホテルを訪れた。映画やテレビドラマでもおなじみの本書の冒頭シーンに鮮烈な印象を持っていたからだ。
阪神銀行頭取の万俵大介の財閥一族による、正月恒例のこのホテルでの晩餐(ばんさん)シーン。豪華な料理、上質なテーブルマナーと会話、高価な服装、一族のエグゼクティブな学歴と職業。「華麗なる一族」を象徴し、この一族の波乱の物語がスタートするにふさわしい名場面だ。
「小が大を食う合併」銀行合併への野望と策略と闇、政略結婚に翻弄(ほんろう)される兄弟と企む女執事、親子間の確執、奇怪な夫婦関係。一族が織りなす野心・権力・金にまみれた魑魅(ちみ)魍魎(もうりょう)の物語は、華麗なるが故か、激烈だ。
それにしても山崎豊子氏が描く悪党・悪女はどの作品でも凄(すさ)まじい。本書の大介と女執事の存在感は他の登場人物を圧倒し続け、読者を驚愕(きょうがく)させる。
ある意味でザ・昭和という感じの物語は執筆後50年の時を経ても色褪(いろあ)せずに読み続けられ、映画・ドラマにもなっている。いつの時代でも人々にはちょっとした欲望や野心、悪党への憧れが潜んでいるのかもしれない。
金融業に携わる方にはお薦めしたい一冊である。
(新潮文庫、税込み1045円)
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