地域銀再編 新常態④ 強者連合で成果着々 提携の形、維持か発展か
2021.10.21 04:35
地方銀行では首都圏を中心に地域のトップ同士のアライアンスが相次ぎ、その進捗や成果が注目されている。地銀再編の主流となる統合や合併よりも経営の自由度やスピードが勝るとされるアライアンスに死角はないのか。強者連合の「千葉銀行と横浜銀行」、「静岡銀行と山梨中央銀行」の”提携後”を追った。
「本当にうまくいくのか」――。千葉銀と横浜銀の組み合わせに、ある地銀幹部はこういぶかる。メガ地銀同士のプライドが不和を招き、連携に水を差しかねないとみるからだ。
2019年7月に始まり、3年目を迎える「千葉・横浜パートナーシップ」の成果を見る限り、その心配はなさそうだ。1年目は法人分野に注力。両行が都内店に新規チームを設置したほか、情報連携や顧客紹介を通じて融資を伸長。特に、シンジケートローンやLBO(借り入れを活用した事業買収)の組成では20年度に2213億円まで増やした。2年目は個人分野を強化し、20年7月に投入した共同開発保険では171億円成約した。
ただ、千葉銀が圧倒的なシェアを誇る千葉県と、横浜銀が大手行と激しく競合する神奈川県では地域性や競争環境が違い、個人分野で共同戦線を張るのは難しい面がある。
20年度までの収益効果は84億円に上り、23年度の目標200億円に向け弾みをつける。両行のアライアンス担当者は「収益効果だけでなく人材育成の効果もある。互いの文化に触れ合うことで行員の技能向上につながっている」と振り返る。
一方、静岡銀と山梨中央銀の包括業務提携「静岡・山梨アライアンス」は10月28日で丸一年に。収益効果の7割を占めるトップライン(3割がコスト削減)を支えるのが仕組み金融と証券業務だ。仕組み金融で先行する静岡銀へ山梨中央銀から3人を派遣。案件増加へ体制も強化した。証券業務では4月に静銀ティーエム証券の山梨本店を開設。山梨中央銀から同証券に出向の7人を含む15人体制で始動し、21年度上期に預かり資産の販売額・残高・収益の目標を達成した。両行のシナジー効果は20年度に約11億円に達し、25年度までに100億円以上を目指す。
今後の課題は「アライアンスの意識醸成」。本部よりも支店の方が実感しづらいため、現場の情報共有や共同推進を加速して協調融資などにつなげる。
強者連合のアライアンスは現状のままか、それとも提携先の拡大や再編へと発展するのか。地銀勢力図の先行きはまだ見通せない。
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