【推薦図書】『ChatGPTの頭の中』(スティーヴン・ウルフラム著、稲葉通将監訳、高橋聡訳)
2024.03.01 04:30
【推薦者】野村証券副社長・鳥海智絵氏
「考える」を考える
ChatGPTの解説本は世の中に溢(あふ)れているし、本書がその中で「わかりやすい」わけでもない(むしろ文系人間には難しい)。しかし、ChatGPT(大規模言語モデル)が文章を作るときに中で起こっていることの説明は興味深い。
単純に言うとChatGPTは、人が作った膨大な文章を飲み込み、質問を受けると飲み込んだ統計データを基に次の単語はこれだろう、と予測した単語を繋(つな)げて回答を提示する。人が期待する答えに報酬を与える、という学習を繰り返すことで、より「それっぽい」答えを出す訓練をされているのである。従って読み書きはできるがソロバンは苦手だ。
「すごい脳みそ」じゃない気がしてやや拍子抜けなのだが、一方で自分自身が「考え」ているつもりのことも、過去にインプットした言語・非言語のデータに基づいて自分や相手が期待するような確からしいアウトプットを出しているだけなのではないか、と思い始める。
1年前の本欄でご紹介した「WHOLE BRAIN」でいう「左脳の大脳皮質(考える左脳)」はAIで置き換え可能なものとなり、「右脳の辺縁系(感じる右脳)」あたりが人を人たらしめるものになるのだろうか、とも思う。
(早川書房、税込み1012円)
関連キーワード
おすすめ
アクセスランキング(過去1週間)
- 横浜銀や静岡銀など20行庫、生成AIの実装拡大へ 検証結果・最善策を共有
- 西京銀、口座開設効果で給振1000件 サービス拡充、流出防ぐ
- 七十七銀宇都宮法人営業所、東北へのつなぎ役に徹する 開設2年で融資170億円
- 三菱UFJ信託銀、低コストPEファンド 1~4号累計で900億円
- 加藤金融相、信用金庫の資本基盤は「総体として安定」
- 都銀、貸出金利引き上げ先行 地銀上回る月も
- 金融庁、サステナ情報開示義務化 SSBJ基準適用
- 肥後銀、「オペレジ」確保を高度化 勘定系バックアップ平日稼働
- しんきん共同センター加盟235信金、「AIスコア」導入へ マネロン対策を底上げ
- ひろぎんHD、女性登用へ階層別研修 役員面談で意識改革