【推薦図書】『イーロン・マスク 上・下』(ウォルター・アイザックソン著、井口耕二訳)
2024.02.02 04:30
【推薦者】住友生命代表執行役専務・栄森 剛志氏
革新の裏側:狂気と純粋さ
現在進行形でイノベーションや騒動を起こし続けている人物の物語なので非常に面白い。筆者によるとイーロン・マスクからは「刊行前に本書を読ませてくれという話はなかったし、実際、読んでもいない」そうだ。だから決して英雄譚(えいゆうたん)ではない。イーロン・マスクの生い立ち、イーロンを取り巻く人々、各事業の舞台裏、さまざまな騒動の顛末(てんまつ)を赤裸々に語っている。
イーロン・マスクはかなり変わった人物だ。発達障害であることを告白している通り、コミュニケーション能力が乏しく、人の気持ちが理解できない。気分の抑揚が激しく、特に「悪魔モード」になった時の彼は冷酷で傍若無人な人物になる。目的の達成に異常な執着を持ち、それを周りに容赦なく求めるので職場はいつも「シュラバ」と化す。しかしその妥協のなさが奇跡とも言えるイノベーションを生み出す。
彼のような人物を受け入れる環境があることが巨大イノベーション企業を次々に生み出すアメリカの強みなのだと理解できる。人にやさしい職場などと言っていては、イノベーションは生まれないのだと思い知らされる。
(文藝春秋、税込み2420円)
関連キーワード
おすすめ
アクセスランキング(過去1週間)
- 北陸銀と北海道銀、営業支援システム導入 年18万時間の作業削減
- 金融界、「隠れリース」特定に本腰 27年の新基準適用迫り
- 群馬銀、ストラクチャードファイナンス3年5.7倍 RORA向上に寄与
- 金融庁、決算書入手方法を調査 地域金融の実態把握へ
- 京都中央信金、理事長に植村専務が昇格 白波瀬氏は代表権ある会長へ
- 福井銀、野村証券と包括提携2年 預かり残高5000億円超
- 固定型住宅ローン、金利〝決め方〟見直し機運 参照指標「再検討」も
- メガバンク、上場廃止増えLBOローン好調 三菱UFJ銀は管理高度化
- 信金、店舗減少が小幅にとどまる 職員数推移との格差鮮明
- 地域銀・信金、NISA口座伸び悩む 3カ月の増加率1%