【推薦図書】『QUITTINGやめる力―最良の人生戦略』(ジュリア・ケラー著、児島修訳)
2024.01.26 04:30
【推薦者】武蔵大学副学長・教授・大野 早苗氏
「やめる力」で人生を切り開く
最近、「やめる」ことをポジティブに捉えた書籍をよくみかける。「やめる」「諦める」という言葉には、国内外を問わず、忍耐のなさ、悲観主義などのネガティブなイメージが付きまとう。しかし、「諦める」の語源は「明らめる」。仏教では「物事の理を明らかにし、理に合わないことを捨てる」という意味があるそうだ。
「やめる」ことには多面的な意味合いがあると本書は説く。現在の自分に足りないものを自覚し、理想の自分について考え、再出発を図るチャンスにもなる。また、「やめる」という行為により脳が活性化されるという神経科学の検証結果もあるそうだ。
野生動物は「やめる」ことを躊躇(ちゅうちょ)しない。狙った獲物の捕獲が難しければ、すぐに諦める。生きるか死ぬかの狭間で、無駄な行為には固執しない。一方、人間は忍耐がないというレッテル張りを恐れてやめない。なぜ、忍耐が称賛されるに至ったのかについても本書は語っている。
著者は「続ける」ことを否定しているわけでもないが、「やめる」ことを戦略的に取り入れ、適切かつ創造的に利用すれば、新たな展開を切り開けることを強調している。まず、やめるのか続けるのかを、自らの決断で選択できることが重要なのだろう。
(日本経済新聞出版、税込み1980円)
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