Nikkin金融講座 金融入門(13)フィンテックが世界を変える(2)
2024.01.19 04:01
◆240兆円の半分がビットコイン
フィンテックは金融のあらゆる分野に進出していますが、なかでも最も競争が激しいのは決済分野です。とりわけ暗号通貨「ビットコイン」の登場は〝黒船〟級の衝撃でした。今のところ投機目的の保有が大半ですが、2009年の誕生から約15年、大きな混乱なく稼働を続けています。
ビットコインを第1号とする暗号通貨の市場は拡大の一途をたどり、今や数万種類の暗号通貨が取引されています。時価総額は約244兆円(1月15日時点)に上り、そのおよそ半分をビットコインが占めています。
米国では、17年12月にビットコイン先物がCME(シカゴ・マーカンタイル取引所)に上場され、この1月には米証券取引委員会(SEC)がビットコイン現物ETF(上場投資信託)の上場を承認しました。暗号通貨取引所の破綻や、取引所からの暗号通貨流出が相次いでいますが、現物ETFは株式と同じように証券口座を通じて売買できるため安全性が高まります。今回の承認は、ビットコインのステータスを高める転換点となりそうです。
◆リップルが国際送金に革命
仮想通貨の最大の特徴はボーダーレス化です。本来、金融取引には国境の壁が存在します。各国の金融当局が厳しく規制しているからです。ところがビットコインはこの壁をやすやすと乗り越えました。インターネット環境さえあれば、世界のどこからでも売買することできます。それを可能にしたのが分散型台帳技術(DLT)であり、DLTの代表格がブロックチェーンになります。
暗号通貨は簡単に作ることができます。今ある暗号資産の多くは、ビットコインのブロックチェーンから派生させて作ったか、暗号通貨「イーサリアム」のトークン機能を借りて作ったかのいずれかです。
暗号資産「リップル(XRP)」は、国際送金に革命をもたらしました。2国間の通貨を一旦リップルに変換して、両替と送金を行います。送金にかかる時間はわずか数秒。送金手数料も安く済みます。既存の金融機関では、米銀大手のJPモルガン・チェースがブロックチェーン技術を基盤とする国際送金に付随する情報プラットフォーム「Liink(リンク)」を構築しています。
◆中央銀行も通貨を電子化へ
各国の政府や中央銀行も、自国の法定通貨を電子化する研究を進めています。正式名称は「中央銀行デジタル通貨(CBDC)」。カリブ海の島国バハマは、20年に世界発のCBDC「サンドドル」を発行しました。主要国では、中国の「デジタル人民元」とスウェーデンの「eクローナ」が先頭集団を走っています。
日本ではまだ具体的な計画はありませんが、日本銀行が「デジタル円」の実証実験を進めています。もし実現すれば、銀行は現金輸送や、ATMに現金を補充・回収するコストを大幅に減らせます。
その一方で、デジタル通貨をスマートフォンのアプリで管理できるようになれば、銀行口座からの預金流出が進むとの見方もあります。口座自体を解約する人が増えるかもしれません。長年、決済業務の中心に位置してきた銀行の存在が小さくなる懸念があります。デジタル通貨は、暗号通貨以上に金融の世界をガラリと変える可能性を秘めているのです。
日本金融通信社編集局 国定直雅
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