Vol.6 アルムナイが人材育成に貢献!事例を読み解く

2024.01.21 04:50
#金融機関に広がる「アルムナイ」
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Vol.5では、『金融機関が注目する「アルムナイ」とのビジネス連携の可能性』というテーマで、企業が社外経験のあるアルムナイとのビジネス連携で生み出す価値と取り組み事例を説明した。今回は「アルムナイ」が元所属企業の人材育成に寄与する取り組みについて事例をもとに解説する。


金融機関は従来、終身雇用を前提とした人事制度を基に人事異動を繰り返すことで社員の育成を図ってきた。しかし、業態の変革に伴い専門人材の獲得が課題となる金融業界において、新たな人材育成の手法を取り入れる企業が増えている。


例えば、社外副業の解禁である。2019年のみずほフィナンシャルグループの副業解禁を皮切りに多くの金融機関が社外副業を認めた。その他、大手証券会社ではベンチャー企業への出向プログラムを提供するなど社外で全く異なる経験を積むことを推奨している。また、三井住友海上火災保険では出向や社外副業経験を昇進の必須条件にするなど、金融機関において社外の経験を積んだ人材の重要性が増している。


そのようななか、金融機関を中心に社内外両方の経験を持つアルムナイが元所属企業の人材育成に寄与する取り組みが進んでいる。各社はどのようにアルムナイの持つ社外知見を自社の社員に還元してもらっているのか、人材育成としての「アルムナイ」を事例をもとに掘り下げる。


① アルムナイが新規事業のアドバイザーを務める
三井住友海上火災保険は人財育成を目的としたビジネスコンテストの審査員を同社のアルムナイが務めている。


本取り組みは毎年決められたテーマで社員から事業アイデアを募集し、最終的に選ばれた案件には事業化の支援を行うものだ。選ばれた革新的なアイデアの実現には、損害保険業界の知見が豊富でなおかつ事業開発の経験や社外のナレッジを持つ人物の協力が必要不可欠。そこで、元々同社の保険開発を担当し、現在はM&A業務に携わるアルムナイが審査員に加わった。審査員を務めたアルムナイからフィードバックされたプログラム参加者からは、「他の審査員とは異なる切り口ながら的確なアドバイスを貰えたことで客観的にアイデアを見直すことができた」とアルムナイならではのメリットを感じられた。


② アルムナイと現役社員の対談会を開催
大手銀行A社ではアルムナイと現役社員がA社の課題について対談するオンラインイベントが開催された。現役社員の発案により実現したもので、社内外両方の知見を持つアルムナイの意見から学びを得ようと150名弱の現役社員が参加。アルムナイからの客観的なフィードバックに耳を傾け、組織と個人の課題を振り返った。


③ アルムナイの独立先に社員が出向
近年、大手企業を中心に中堅社員のリスキリングや越境学習の機会を提供する企業が増えている。しかし、社員の中には越境学習の重要性は理解しつつも、全く異なる環境に挑戦することに躊躇う人も多くいる。大手サービス業界B社では、他分野の接客を学ぶ目的でアルムナイの設立したレストランに現役社員が出向した。同社は社員の他分野での経験が自社の接客業でも活かされると考えている。従来の出向は働き方や人間関係など環境の変化が社員の負担になると懸念されているが、自社を良く知るアルムナイの元で接客を教わることができるため出向した社員は自身のスキルアップに専念することができる。
また、アルムナイにとっても出向社員の強み弱みをよく理解したうえでミスマッチなく雇用できると双方にとってメリットのある取り組みになっている。


まとめ
このように、アルムナイは在籍経験や業界知識があるからこそ、最も近くにいる第三者の立場から、現役社員に有効なアドバイスをすることができる。社外経験が重要視される金融機関ではより一層、社内外の知見を持つアルムナイが重要視されるだろう。


次回は地域企業におけるアルムナイネットワークについて解説する。


矢島光進 ハッカズーク


執筆者:矢島光進
プロフィール:株式会社ハッカズーク コンサル・CS
大手企業へのセールスを経験後、創業初の大型オンラインイベント「アルムナイ・カンファレンス」の企画・運営を推進。セールス・マーケティング業務で得た経験を活かして、現在はコンサルタントとして企業とアルムナイ双方にとって価値のあるネットワーク構築に取り組んでいる。

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